2026年正月明けの三連休中日、友人からLINEが来た。

イノシシだと!?
二日酔いでぼんやりしていた頭が覚醒した。
猪。
前から扱ってみたいと思っていた食材の一つだ。
いるに決まっている。
冷静さを装って「ぜひ!」と返した。内心はすでに寸胴鍋の姿が見えていた。
LINEをくれた友人まっさんはもう10年ちかいマラソン練習仲間だ。彼は奥多摩を中心に活動している山と自然を愛する男である。
▼まっさんのHP
彼は以前から、鮎やら鹿やら山葵やらといった入手したり育てた食材を度々自分に分けてくれる。過去にはそれを使い鮎ラーメンとか鹿ラーメンとか作った。
そして今回は猪をくれるという。うれしい。
翌朝、まっさん邸にお邪魔し、猪肉と骨を受け取った。

いっぱい譲っていただいた。あざす。
骨は背骨〜骨盤とアバラの部位をいただいた。表面の雑菌が増えないようにと、まっさんが軽く下茹でしておいてくれた。あざす。

こいつは1歳前後のオス猪だという。
一昨日まで奥多摩の山を駆けていた。
そして猟師さんが仕掛けた箱罠にかかった。
ベテラン猟師とまっさんの手によって完璧な血抜きと処理が施されて、骨も肉も若く、気になっていた獣臭も拍子抜けするほど感じない。
情報としては十分だ。下手なブランド豚より来歴がはっきりしている。
骨回りについた肉からも上質な出汁がとれそうだ。
これはもう、余計なことをせず正面からラーメンにするしかない。
ラーメン、というより澄んだスープに醤油がビッと効いた昔ながらの中華そば。
そんなイメージに仕上げましょう。
寸胴に水をはり、背骨と骨盤をまとめて寸胴に放り込み、沸いたら弱火でひたすら煮ていく。
スープに使う骨肉の重量が4kg弱だったので、水は5リットル入れ、最終的に4リットルのスープを取る算段。

スープはシンプル。
・猪
・水
・日本酒
・ニンニク
・ショウガ
・日高昆布
・ネギの青いとこ
以上。
澄んだ清湯仕立てで40代でもおいしく食べられるすっきり系スープを目指したい。
沸騰したら、灰汁をとり、弱め中火で3時間ほどコトコト。灰汁は取るが、取りすぎない。猪の「山の気配」を残したい。

ここから少し、素人のラーメン自作愛好家のたわいもない研究結果を書く。
私は豚骨は長時間煮出したほうがいいと考えていた。だが実際はそうではなく部位や目的によって変わる。
豚の背骨は拳骨(手足の骨)とちがって比較的短時間で旨味=出汁がでる。むしろ炊きすぎないのがよい(炊きすぎるとぼやける)。猪もたぶん同じ。短期決戦で3時間位さっと煮てフレッシュなスープをパパっと取りたい。
以前、ある家系ラーメン屋で、背骨が寸胴に追加投入された直後の寸胴から作られたラーメンがおいしかった記憶があるんです。火入ってなくない?衛生的に大丈夫?とおもいつつ提供されたラーメンのスープすすったら官能的なおいしさだった。背骨は煮すぎちゃだめなんだな。背骨は速さが大事。そこから私はそう考えるようになった。(雑な研究報告おしまい)
しばらく煮込んでから味見をすると、野性味は感じず、むしろ繊細な清湯スープ。
拍子抜けするほどクセがない。熟練の猟師さんによる血抜きのおかげだろうか
寸胴に浮いてきた脂はすくい取り、集めておく。香りは重くない。仕上げの脂として使う。
トッピング用のチャーシューは猪の肩ロースを使う。肩まわりの肉ということで喉笛らしき部位もついていた。

端っこをちょっと切ってフライパンで焼いて味見。

醤油をかけて一口かじると、猪の脂とうまみがじわっと広がる。
育てられたのではなく自分で育ってきた生き物の違いなんだろうか。
脳みそがよろこんで騒ぎだす。そんな味がする。
こりゃ焼いて食うのが一番かもなー。
ただ今回はラーメンだ。おいしい煮豚ならぬ煮猪(なんて読む?)を作ろう。
肩ロースも寸胴に放り込んで30分ほど煮てから、濃口醤油に水少し、みりん、酒、砂糖の適当に煮たチャーダレでさらに20分煮込んで煮豚完成(写真とりわすれた)
ラーメンタレは、薄口醤油メイン。そこに昆布醤油を加える(これもまっさんから岩手土産でもらったものでおいしい)、あと酢とみりんと砂糖少し。こいつを手鍋で煮詰めて完成。

このタレには魚節と干ししいたけ、昆布を加えてうまみも増強(写真とりわすれた)
久しぶりにも打った。小麦粉はみんな大好き春よ恋、加水率40%。かんすいはスクナメの中太イケ麺に仕上げる。

役者はそろった。さあ、仕上げましょう。
麺をゆでてスープと合わせて・・・
奥多摩猪の中華そば、完成。

最近お気に入りのちゃん系ラーメンのイメージで盛り付け。
AIが作ったイメージじゃないぜ。猪のスープが香るぜ。
具は刻みネギ&事前に仕込んだコリコリメンマ。
白飯を添えるのは紳士のマナーだと思う。

一口目。
普通においしい中華そば。
スープはすっきり澄んでいて、ほんの少しだけ特徴的な猪の脂がうまい。
若い個体だからか血抜きのためか、山の動物特有の硬さや臭みはない。
「猪なんですよ」っていわれなきゃ正直わからないと思う。
食わせた家族も「猪み」を感じてなかったようだ。
ネギが合う。こりこりに仕上げたメンマもよい。

濃い目に味付けした煮猪と刻みネギをスープから取り出す。白飯に乗せる。かきこむ。

サイドディッシュとして白飯を用意した判断は間違っていなかった。
猪と白飯は最強のタッグだ。
♪ぼかあ幸せだなあ
僕は君といる時が一番幸せなんだ
僕は死ぬまで君を離さないぞ、いいだろ
今日の感想
・ちゃんと血抜き処理された猪は美味い
・若い個体は(多分)食材として扱いやすい
・背骨は短時間でも出汁がでる(豚と同じ)
・猪と炭水化物はあう(太る)
いくぶん改良の余地はあるがおいしかった。
昨日まで奥多摩で駆け回っていたやつがおいしい中華そばになっている。
自分で作っておきながら不思議な気持ちになった。
まっさん、ありがとう。
次はキジでも熊でも、連絡待ってます。
お粗末様でした。