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【珠玉!】山藤章二「夕刊フジ」連載イラストエッセイ《文庫》オールガイド

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今月初旬…。

稀代のイラストレーターであり、エッセイストでもある山藤章二先生が、逝去されてしまった。

僕は、先生のライフワークと言える「ブラックアングル」や、エッセイストとしても超一流だったことを証明する「アタクシ絵日記」について言及し、大いに偲んだ。

しかしそれは、山藤先生が遺された多大な作品群のうち、ほんの一部を紹介させていただいたに過ぎなかったのである。

とりわけ、「夕刊フジ」紙において、多数の超人気作家たちと組んで発表したイラストエッセイ群は秀抜だった。

そもそも僕が最初に、山藤先生のイラストに出会って痺れたのも、この連載企画だった。

そう。

僕が子どもの頃から敬愛し、心酔している筒井康隆先生による爆笑エッセイ集。

「狂気の沙汰も金次第」である。

これが夕刊フジで連載されていたのは1973年で、僕は、リアルタイムにそれを読むことはできなかった。

しかし、ツツイストになって筒井先生の本を貪り読んでいた時代、出会って大きな衝撃を受けた一冊なのだ。

山藤章二先生は、「(筒井先生が)美男すぎて似顔絵が書けない」とのことで、顔の部分が真っ白になっていたのも斬新だった。

小松左京先生、星新一先生との共演イラスト。いやぁ、もう、最高だ。

僕は、これを契機に、僕は後に、山藤章二先生がタッグを組まれた「夕刊フジ」連載の本を買いあさることになる。

先生がタッグを組んだ作家陣は、以下の通り。

梶山季之/山口瞳/筒井康隆/吉行淳之介/井上ひさし/五木寛之/渡辺淳一/藤本義一/青木雨彦/中島梓/つかこうへい/村松友視/景山民夫/林真理子/横澤彪

いやはやなんとも豪華な、素晴らしい作家たちだ。

山藤先生は、どんな大家に対しても臆することなく、時に、デフォルメした似顔絵イラストを添えながら、毎日、エッセイ内容に沿ったイラストを描かれていた。

その幅の広さ、懐の深さには驚くばかり。

梶山季之/渡辺淳一/横澤彪の3氏のエッセイ以外は文庫化されているので、僕は、それらを全て入手し、宝物として所有している。

何度読んでも色褪せない、素晴らしき僕の宝物群。

あまりに愛おしいので、全ての本に透明カバーをかけて保存しているほどだ。

青木雨彦さん以降、山藤先生は《共著》という扱いになっており、この連載企画における先生の存在が、如何に大きくなっていたかということがわかる。

今回は、そのエッセンスを連載年順にご紹介させていただこう。

山口瞳「酒呑みの自己弁護」(1972)

※連載当時のタイトルは、「飲酒者(さけのみ)の自己弁護」

酒呑みの自己弁護 (ちくま文庫 や 38-2) | 山口 瞳 |本 | 通販 | Amazon

毎回、酒にまつわる洒脱なエッセイが綴られており、酒好きにはたまらない。

山藤先生が描く、山口瞳さんのイラストは愛嬌があって素敵だ。

筒井康隆「狂気の沙汰も金次第」(1973)

狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)

その素晴らしさは前述の通り。

最高のエッセイに極上のイラスト。もう何十度と読み返している。

吉行淳之介「贋食物誌」(1973-1974)

※連載当時のタイトルは、「すすめすすめ勝手にすすめ」

贋食物誌 (中公文庫 よ 17-12)

当時から強面の大家だった吉行淳之介先生の似顔絵も大胆。

毎回欠かさず描かれている、こめかみの血管がポイントだ。

井上ひさし「巷談辞典」(1974-1975)

巷談辞典 (河出文庫)

毎回、四文字の成句を題材にした、言葉にこだわる井上ひさし先生らしいエッセイが堪能できる。

「歯」を大きく協調した、井上ひさし先生の似顔絵インパクトが凄い。

五木寛之「重箱の隅」(1975-1976)

重箱の隅 (文春文庫 い 1-23)

山藤先生は、時折、以前タッグを組んだ作家たちを登場させるが、これはその総集編といった感じ。

筒井先生の顔はやっぱり真っ白だし、吉行先生のこめかみ血管もしっかり描かれている。

藤本義一「サイカクがやって来た」(1977)

サイカクがやって来た (新潮文庫 ふ 13-1)

藤本義一先生らしい、「色」と「欲」にこだわったエッセイ集。

エッセイの内容が結構イヤらしくなっていても、適度な変化球でそらしたり茶化したりする、山藤先生の手腕が見事。

青木雨彦「にんげん百一科事典」(1978)

※連載当時のタイトルは、「三尺さがって六尺しめて」

にんげん百一科事典 (講談社文庫 あ 7-13)

「夕刊フジ」連載シリーズの中で、この本はちょっと異色。

俳優、歌手、作家、文化人など、総勢101人を取り上げたエッセイ&似顔絵集になっている。

似顔絵には、毎回、名前の折り込まれた身上判断詩が折り込まれており、山藤先生の大喜利力も堪能できる本だ。

中島梓「にんげん動物園」(1980)

にんげん動物園 (角川文庫 緑 500-51)

中島梓先生は、《グイン・サーガ》シリーズで有名な栗本薫先生の別名。

エッセイや評論などを受け持っており、僕は、その奔放で軽いエッセイが最高に好きだった。

中島梓先生は、歯を強調して描かれた自分の似顔絵が不満で、山藤先生に度々文句を言っていたのが印象的。

まさか、あんなに若くして亡くなってしまうとはなぁ…。本当に無念だ。

つかこうへい「つかへい犯科帳」(1981-1982)

つかへい犯科帳 (角川文庫 緑 422-10)

このエッセイが「夕刊フジ」に連載されている時期、つかこうへいさんは、「蒲田行進曲」で直木賞を受賞。

脂がのりきった時期のエッセイだけに、実に面白い。

この本の解説を中島梓先生が行っており、山藤先生イラストの《被害者》として、いちゃもんをつけているのが、実に面白い。

村松友視「私、小市民の味方です。」(1983)

私、小市民の味方です (新潮文庫 む 7-1)

「私、プロレスの味方です」というプロレス本で華麗なる文壇デビューを果たし、一躍大人気。作家としても「時代屋の女房」で直木賞を受賞した直後の連載。

タイトル通り、毎回、小市民的な《目の付けどころ》が光る。

アントニオ猪木について6日連続で綴った以外は、プロレス色も控えめで、バラエティに富んだ内容。

山藤先生のイラストも、テーマに応じて切り口が変わっており、実に楽しい。

景山民夫「食わせろ!!」(1986)

※連載当時のタイトルは、「森羅百象ナマ殺し」

食わせろ !!(角川文庫 か 16-8)

放送作家として大人気を誇り、この連載の2年後には、直木賞も受賞。

飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあった景山民夫先生のエッセイだから、勿論面白い。

連載の最終回は、なんと山藤先生がエッセイを書き、景山さんがイラストを描くという《仕掛け》もあり、いかにもアイデアマンの景山先生らしいなぁという感。

しかし…。

その後、景山民夫先生は、幸福の科学騒動で文壇から姿を消し、50歳にして謎の死に至ってしまった。本当に才能のある先生だっただけに、残念でならない。

林真理子「チャンネルの5番」(1987)

※連載当時のタイトルは、「マリコとショージのチャンネルの5番」

チャンネルの5番 (講談社文庫 は 26-3)

「夕刊フジ」連載当時のタイトル(マリコとショージのチャンネルの5番)からわかる通り、これはもう、完全に林先生と山藤先生の共著。

連載開始時に、林先生の方から山藤先生を指名したとのこと。

山藤先生はその話を聞いた時、「常日頃自分があれほどからかったり、コケにしたネタにしているのに、なおも胸を借りようとしているところがエラい」と快諾したそうだ。

山藤先生は、その期待(?)に応え、容赦なくデフォルメした林先生の似顔絵で、遊びまくり。いやぁもう、最高に面白い。




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