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『ラスト ワン マイル』 - 宅配便のドライバーの場合

「お仕事いろいろ(3)」の第五弾は、風戸野小路『ラスト ワン マイル』(集英社オレンジ文庫、2021年)。宅配便で圧倒的なシェアを誇り、従業員数も十万人を超える昭和街送。主人公は同社の配送員(宅配便のドライバー)で、定年を一年後に控えた秋山晋。ところが、最近の昭和街送は、一層の高収益を獲得するために、合理化・コスト削減を徹底させ、労働強化など厭わないという姿勢を貫いていたのです。その結果、「超が三つ付くくらいブラック企業化」が進行。秋山自身も辞めたいと思わない日がないほどひどい状態に陥っていたのです。加えて、会社側は、秋山を営業所の所長に就任させることで、過酷な労働を余儀なくさせ、退職金を満額払うことなく、自主退職に追い込もうという行動を起こします。背景には、「定年退職金は支社の経費だ。数千万円は痛い。それに定年退職者を出したとなったら恥だからな」という支社幹部の思惑があったのです。実のところ、秋山は、無事定年退職を迎えることができるのでしょうか? 宅配便のドライバーをはじめ、物流会社で働く人たちの労苦、業務の実態がよくわかる作品です。

 

[おもしろさ] 経営側の「ブラック化推進策」の弊害

昭和街送に30年以上勤務している秋山晋。かつては、それほど労働環境が劣悪な会社ではありませんでした。劣悪化に拍車をかけたのは、5年前に就任した現社長が「対前年比一割増」の荷物をかき集めてこい、しかも経費は一割減にしろという「一増一減計画」が実施に移されたことでした。その結果、会社は、売上ノルマ、荷扱い量のノルマ、荷物一個当たりの単価、一時間当たりの各個人の荷捌き個数など、事細かく管理するようになりました。本書の特色は、第一に、そうした会社側のやり方がそこで働いている人に悪影響を与えているのか、第二に、そうした「ブラック化推進策」にどのような抵抗があり得るのかを描き出している点にあります。

 

[あらすじ] 「面倒くせえな」という言葉とともに… …

昭和街送の定年は、満60歳を迎えた後の最初の3月31日と決められています。物語は、「定年まで一年」となったドライバー・秋山晋の日常描写からスタート。とても重いスーツケースを抱えながら階段を一段一段のぼり、やっとたどり着いた5階のお客様の自宅。「今日の午前中指定」なので、いないわけがないはずです。待つこと数分。何度もチャイムとノックを繰り返す。「開いてくれ、頼む!」。それでも応答がありません。「こんな時は何も考えないのが一番だ」。やむを得ず、スーツケースを抱え、トラックまで戻ることに。翌日、秋山は、「平成28年度定年対象者説明会」に出席するために本社に出向きます。ところが、驚かされたのは、会場にいたのは、秋山を含めてたったの二名だったことです。それでも、「あと一年頑張ればいい」と思い直します。しかし、もう一人の出席者から、「ジジイ狩り」の話を聞かされます。それは、「定年まで一年を切った社員は肉体面、精神面で追い詰めて自主退職を促す」というもののようです。定年者説明会から数日後、秋山は、上司でブロック長の都賀谷光一から、定年までの期間、所長をやってほしいと懇願されます。その職は、会社・部下客といった各方面からの数々の難題をまともに受けることになる、いわば「過酷な緩衝材」のようなポストだったのです。「なんで今更、俺なんだよ」。そう思う秋山の脳裏に蘇ったのが、定年者説明会で聞いた「ジジイ狩り」だったのです。やがて、「面倒くせえな」という言葉とともに、「秋山の中で何かが吹っ切れた音がした」のです。

 




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