「お仕事いろいろ(3)」の第二弾は、小野寺史宜『みつばの郵便屋さん』(ポプラ文庫、2014年)。赤色のバイクに乗って一軒一軒、郵便を配達する郵便屋。頻繁に目撃する機会があるので、多くの人はさほど気に留めることがありません。いわば「日常という風景の一部」になっているのかもしれませんね。でも、郵便配達員にも、職業人として固有の苦労・喜び・プライドがあります。この本は、そんなポストマンというお仕事の内実に迫ることができる作品です。
[おもしろさ] 「郵便屋さんも、大変だよね」
郵便配達員と受取人のやり取り・会話の事例を二つほど紹介しましょう。ひとつ目。信書の中には、差し出した人と受け取った人のそれぞれの人生を変えてしまうかもしれない内容のものも含まれています。「郵便屋さんも、大変だよね」「はい?」「だって、そんな手紙を託されちゃうんだからさ。しかも、たった80円の料金で」「あぁ。はい」「それが届くと届かないじゃ、大違いだよね。届かなかった場合でも、その子は届いたと思ってるし、わたしはその子がそんな手紙を出したと知らずにいるわけだから… …」。ふたつ目。いつもは郵便受けに入れてくれるのだが、「そのときぼくが近くにいたから渡してくれた。それを見て、『あ、きた!』って言ったら、その人、『待ってたのか?』って。初めて声聞いた。で、『うん』って言ったら、『よかったな』って。それで、ブーンて行っちゃった」。「差出人と受取人にとってとても大切な信書を確実に届ける」という郵便屋の役割・社会的意義が凝縮した形で示されています!
[あらすじ] 「町に空いた小さな穴」でも気づいてしまう
物語の舞台は、蜜葉市。主人公は、郵便配達員になって七年目に入った平本秋宏。みつば支店は、入社後二カ所目の勤務地で、二年目を迎えたばかりです。彼の配達区は、一区のみつばと三区の四葉。年子の兄である人気タレントの春行とは顔がそっくりなので、よく間違われるものの、秋宏の方は、いたって地味な性格。配達を担当する「地区の番地と名字は、すべて頭の中に入ってい」ます。バイクの前にある配達カバンと後ろのキャリーボックスには、いっぱいの郵便物が入っているのが朝の状態。二人乗りをしているように感じられるほど、バイクは重くなります。それを5時間ほどかけて、そのバイクを軽くしていくのが一日の仕事。敵は風雨。郵便物が濡れたり、飛ばされたりするし、路面が滑りやすくなったり、風にあおられたりするからです。郵便屋の「バイクの音は、町の音の一部なのだ。初めから意識していない限り、鳴っても気づかれないだろう」。反面、郵便配達員の方は、毎日、同じルートを回るので、「町に空いた小さな穴」があると気づいてしまいます。町や地域の「偉大な観察者」でもあるのです! 「町は生きている。もしかすると、感情なようなものもある」。いくらかは、本気で思っているところがあるようです。