このブログは基本的に、テーマを決めて、それに合った複数の作品を紹介するという形式を採っています。ただ、そうなると、同じテーマの本を二冊以上読み込まないと、紹介できないことになります。そこで、今年の2月6日~2月27日に「お仕事いろいろ」というテーマで多種多様な業界・職種を扱った、「おもしろくて、ためになるお仕事小説」の紹介を行いました。今回は、その二回目の試み。「お仕事いろいろ」という切り口で、七つの作品を紹介したいと思います。
「お仕事いろいろ」というテーマで紹介される作品の第一弾は、渡辺千穂(脚本)、木俣冬(ノベライズ)『ファースト・クラス』(扶桑社文庫、2014年)。東京・下町の衣料材料店で働いていた吉成ちなみ26歳。ちょっとした縁で、有名なファッション雑誌『ファースト・クラス』の編集部で働くことに。が、夢にまで見たきらびやかな職場は、野望を抱いた女たちの陰湿で壮絶なバトルの世界でした。一緒に働く「仲間たち」からのいじめ・パワハラ・罠に翻弄されながらも、自分の進むべき道を見出し、成長していくちなみの熾烈なストーリー。2014年4月19日~6月21日にフジテレビ系で第一期が放送されたドラマ『ファースト・クラス』(主演は沢尻エリカさん、出演は佐々木希さん、)の脚本をノベライズしたもの。
[おもしろさ] 襲いかかる「いじめ・罠・足の引っ張り合い」の数々
「この物語は、6畳ひと間に住むひとりのシンデレラが、きらびやかなファッション業界に足を踏み入れ、降りかかる幾多の困難や罠、そして様々な格差に負けずに、成功への階段を駆け昇ってゆくお話」。それゆえ、読みどころは、①シンデレラとなるヒロイン・ちなみに襲いかかる「いじめ・罠・足の引っ張り合い」の数々、②それらに伴うダメージや苦しみ、③それらを乗り越えていくちなみのたくましさということとなります。
[あらすじ] 「いてもらったら困るんやわ。潰させてもらうわ」
衣料材料店で働き、6畳ひと間のアパートで暮らしていた吉成ちなみ。「客にも仕事仲間にも分け隔てなく優しく働き者だったので、みんなからかわいがられて」いました。もともとファッション関係の仕事をしたかったので、いろいろ努力をしてきました。ところが、自分のセンスを生かす仕事にはなかなか就けません。そんな彼女に、夢のようなチャンスが舞い込みます。それは、大手出版社である詢香社出版が誇るオシャレ最先端のファッション誌『ファースト・クラス』編集部で、インターン(見習い)として働くことでした。編集長は、業界の絶対的女王である大沢留美41歳(夫は10歳年下、子どもはいない)。副編集長の八巻小夏41歳は、「はた目には大人ガーリー系ファッションで家庭的な雰囲気だが、素顔は隠れ肉食系性悪女子」。契約社員のエディターである木村白雪31歳は、たたき上げのハングリーモンスターである独身女性。モデルかと見まがうほどスタイル抜群の川島レミ絵24歳は、「腰掛け系の腹黒コネ入社」のエディター(正社員)。トップモデルのMIINA25歳(元ギャルで、危険なワガママピュア女)とERENA23歳は、互いに敵視しあう間柄。仲間意識はなく、皆それぞれを「敵」だと思っているような職場なのです。満面の笑みをたたえ、ちなみに挨拶をする白雪。しかし、心の中では、「ごめんな、あんたにいてもらったら困るんやわ。潰させてもらうわ」と思っていたのです。唯一の救いは、スタイリスト兼ファッションディレクターの磯貝拓海37歳のアシスタントである西原樹26歳の存在。「まだ陽の目を見ない王子様」で、ちなみの理解者になったのです。最初のうちは「充実感でいっぱい」だったちなみ。徐々に、職場の雰囲気を理解。「正直過ぎたり、他人に気を使っていたりしたら、たちまち足下をすくわれてしまう、生き馬の目を抜く世界」だということを。「あなたの味方は、自分だけ」「育ててもらうのではない。自分で勝手に育つの」という留美の言葉に唖然とするものの、積極的に動くことを自分に課すように変わっていきます。