
内閣府の規制改革推進会議の答申案で、重きが置かれたテーマの1つに「要介護認定のあり方」があります。すでに通知等で実現された課題もあれば、たとえば2027年度までに実現を迫っているものも見られます。改めて改革の方向性全体を整理してみましょう。
5月の厚労省通知で早くも改革スタート
規制改革推進会議の「要介護認定」にかかる答申案の内容は、かなりのボリュームです。この項目のうち、2024年度から検討・措置を開始するとした項目に絞ったうえで、改革スケジュールによる時系列で整理します。
●すでに現時点で実施済みのもの
(1)5月31日の厚労省の事務連絡「がん等の方に対する速やかな介護サービスの提供について」の中で示されている通り、がん等により心身の状態が急激に悪化するケースを想定して、以下の対応が求められました。
1つは、「迅速なサービス提供に向けた暫定ケアプランの活用の推奨(保険者への再周知等)」。2つめは、「主治医の意見書の簡易な作成(保険者判断で実施)」。3つめは、「患者の退院に向けた医療機関とケアマネ等の協働など、医療・介護連携等の推進(診療・介護報酬上の連携評価などの再周知など)」です。
厚労省通知では、上記の他にも「オンラインによる認定調査の実施」や「がん患者等への区分変更申請の迅速化の周知」、「認定審査会の柔軟な運用」などが示されています。
認定迅速化に向けた保険者へのプレッシャー
●2024年度中に実施を求めているもの
(2)要介護認定の処理期間が法定の30日を超えるケースが常態化していることを受け、調査から審査等のそれぞれの段階の目安となる期間を検討して設定するというものです。その際には、今回の厚労省通知や今後の検討課題を含めて、認定期間におよぼす影響も分析することを求めています。
●2024年度から2027年度にかけて継続的に実施を求めているもの
(3)上記の分析にも関係してきますが、厚労省に対し、以下の項目等について(都道府県別の)全国集計やホームページでの公表を求めてます。その項目とは。「認定審査期間」や「主治医意見書作成までの所要時間」、「認定審査会の判定の所要時間」、「一次判定から二次判定にかけての変更率」についてです。
これにより地域の「要介護認定にかかる状況」がより明らかになり、保険者努力を促すことになります。それでも、要介護認定の迅速性が十分に改善されていない場合には、保険者へのPDCA管理を求めています。
2024年度からの継続的な実施となりますが、多岐にわたる内容での全国集計となれば、それなりの予算も必要になりそうです。
事前の意見書作成。ケアマネ実務にも影響⁉
●2024年度から検討を開始し、2026年度には結論を出すことを求めたもの
(4)認定の迅速化に向け、現状で認定審査会の簡素化が可能とされているケースを拡大すること。現状での対象は「更新申請に際し、一次判定結果が前回と同様のケース」となっています。ここに、「がん等の疾病により心身の状態が急速に悪化しているケース」などを含めることの検討を進めるというものです。
なお、認定の迅速化の観点から、認定審査会での学習AIの活用のモデル事業の実施も検討の対象としています。いずれも結論が出た後は、2027年度からの実施となります。
(5)主治医意見書の所要時間の短縮を図るために、申請者が認定申請前に、主治医に対して意見書作成を依頼することを可能にすること。こちらは、2027年度からというより、結論が出次第速やかに実施することを求めています。
この(5)が実現された場合、ケアマネが利用者からの「作成依頼」の中継ぎをするといったしくみも想定されるでしょう。ケアマネの実務負担という点で注意したいポイントです。
認知症ケアの手間を反映させる認定改革も
ここまでは、主に「(特にがん患者等を中心とした)認定の迅速化」や「審査会の効率化」に焦点を当てたものです。実は、現場としても注目したいのが、「コンピュータによる一次判定のもととなるデータの見直し」です。
答申案では、以下の2点を指摘しています。⑴現行プログラムは重度の介護施設入所者のデータが中心で、在宅、通所などの利用者の生活の環境や実態が反映されていない。⑵認知症の利用者が増加する中、BPSD悪化への対応の手間に比べて認定が軽く出てしまうというケースが見られる──という点です。
こうした指摘のもと、現行プログラムにおける最新データへの更新や、特に認知症の人に対する調査項目の検討を求めています。スケジュールとしては、やはり2024年度に検討を開始し、2026年度までに結論を出したうえで、2027年度から実施するとしています。
介護現場としては、利用者の居宅での生活環境や生活状況、認知症の状況がより正確に反映されるという点で、歓迎すべき方向性と言えるかもしれません。ただし、方向性はいいとしても、プログラムや調査項目のあり方が具体的にどう変わっていくのかは気になるところです。「現場の実感」との乖離が逆に進んだら…という不安も付きまといます。
今後、更新に向けた検討会も開催されるでしょうが、どこまで現場の実態をシステムに取り込むことが可能なのか。利用者・従事者含めて、報酬・基準改定と同様、もしくはそれ以上に注視することが必要になりそうです。
【関連リンク】
要介護認定にAI活用を 規制改革推進会議が答申 2次判定のモデル事業など提言 - ケアマネタイムス

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『』(自由国民社)、 『』 (ぱる出版)、『』 (ぱる出版)、『』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。