
厚労省の老健局で、「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」がスタートしました。同検討会は、一昨年の介護保険部会における「介護保険制度の見直しに関する意見」を受けての設置となります。スタートしたばかりですが、2027年度改定に向け、どのようなケアマネ改革が待ち受けるのでしょうか。
今改定で打たれている「布石」にも注意
ケアマネ改革の行方は、「検討会の議論を受けて」となるわけですが、一方で、その議論にかかってくるバイアスにも注意が必要です。
なぜなら、厚労省としては、すでに2024年度改定で次期改定等を見すえた「布石」をいくつか打っているからです。もちろん、状況次第で撤回していく(例.今改定での公正中立にかかる「義務化」を「努力義務」に格下げしたケースなど)可能性もありますが、何らかの改革のレールがすでに敷かれているという点を無視することはできません。
また、今回のような検討会では、「ケアマネ人材の確保」が主要課題の1つとなりますが、その解決に向けては財政上の都合が絡むことも頭に入れなければなりません。
たとえば、人材確保を議論するうえでは、当然「ケアマネの処遇改善策」が浮上します。しかし、財政論、つまり「制度の持続可能性」という観点から、「さらなる業務の効率化」とセットにされやすいのが実情です。これは、6月からの新処遇改善加算に、生産性向上の取組みが大いに絡むことを見ても明らかです。
加えて、2025年にスタートする介護保険部会の議論では、政府の骨太の方針など、を受けて「ケアマネジメントへの利用者負担の導入」が論点となるのは確実です。ケアマネの処遇改善の議論も、利用者負担との兼ね合いでトーンが変わってくることが予想されます。
モニタリングそのものあり方を見直す⁉
まず「布石」について述べましょう。
今改定では、居宅介護支援と他サービスとの連携にかかる様式がいくつも新設・見直しされました。ケアマネ側からの発信だけでなく、ケアマネに寄せられる情報も同様です。
たとえば、テレビ電話装置等を使ったモニタリングでは、オンラインで確認が難しい情報について、サービス担当者に確認を依頼する情報連携シートが設けられました。あくまで参考様式ですが、疑義解釈によれば、他の連携アプリ等を使っている場合でも、情報連携シートと照らすことを求めています。
「実務が手間なので、オンラインによるモニタリングは行わない」という事業所も多いようですが、厚労省が新様式に重きを置いている点で、その活用域は今後も広がりそうです。
この新様式は、「適切なケアマネジメント手法」にもとづいて改定された「課題分析標準項目」に準じています。その点で、他サービスとの連携(つまり、チームで実践する)を前提に、モニタリングそのもののあり方を見直す「布石」になっていると考えられます。
ケアマネの司令塔的役割を強化する流れ?
ケアマネからの情報発信である、入院時情報連携加算の新たな情報提供様式も同様です。同様式では、「ADL・IADLに関する直近2週間以内の変化」や「認知機能の状況」などの項目が新設されています。
前者では、利用者の入院決定時での情報蓄積が重要で、ケアマネ自身によるモニタリング情報に加え、各サービス担当者からの情報収集やすでに寄せられている情報の分析が欠かせません。後者では、新たに導入された「生活・認知機能尺度」との関連が深いという点で、やはり各サービス側が収集している情報との「すり合わせ」がポイントとなります。
これ以外にも、訪問系・短期入所系で口腔スクリーニングにかかる加算が誕生し、リハ系・通所系から渡される情報では、リハビリ・機能訓練と口腔、栄養の一体的取組みをベースとした内容が増えていきます。
いずれにしても、ケアマネには、(1)ケアチーム内で情報集積の司令塔となり、(2)収集された情報を分析しつつ迅速なプラン変更や医療へのつなぎを担う──といった役割がますます重視されることになります。
ケアマネの役割が専門分化される可能性も
もちろん、ケアマネの役割として、利用者・家族への相談・支援も欠かすことはできません。要介護世帯内の課題が複雑化・複合化する時代には、むしろ強化されるべき視点でしょう。多様な訴えが激化するとカスタマー・ハラスメントにつながる傾向も強まることから、その部分への制度的対処も不可欠です。
これらは、ICT等による業務効率化だけで解決することは困難です。本来は包括等のサポート力が問われる部分ですが、総合相談支援まで居宅介護支援に委託するという施策の流れを見ると、現場の実態にどこまで踏み込めるかには疑問符が付かざるを得ません。
結局のところ、今改定で打たれている布石と現場の実態とのベクトルには大きなズレが見られます。この距離を埋めるには、ケアマネの必要数を国の想定以上に引き上げる必要があります。あるいは、ケアマネの役割を利用者・家族の相談支援に特化し、先のチームの司令塔役・情報のつなぎ役を別の専門職に委託するという改革も必要になりそうです。
その専門職として、自治体が直接雇用する「公務員ケアマネ」のあり方も浮かびます。そうなると、認定ケアマネの国家資格化なども浮上するかもしれません。こうしたさまざまな可能性を視野に入れる必要があります。
【関連リンク】
ケアマネジメントの質改善などを議論する検討会が初会合 厚労省 - ケアマネタイムス

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『』(自由国民社)、 『』 (ぱる出版)、『』 (ぱる出版)、『』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。