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AIネイティブの子どもたちは、どのように育っていくのだろうか?──『AIは私たちの学び方をどう変えるのか―BRAVE NEW WORDS―』

この『AIは私たちの学び方をどう変えるのか』は、誰もがどこにいても無償で世界水準の教育を受けられることを使命とする非営利団体のカーンアカデミーを創設し、OpenAIと組んでAIを組み込んだ教育プラットフォーム「カンミーコ゚」なども開発しているサルマン・カーンが、AI✗教育の未来について語った一冊だ。

OpenAIに投資し、支援を受け、教師AIの分野でも当事者ということで、立場的には偏ったものになるが、ここで語られている「教師AIの有用性」は確かなもので、たしかにこうした活用手法は有用だろうな、と思わせる説得力がある。また、ChatGPTを教師役にするには依然として問題があるわけだが(間違いを教えられるなど)、そうした問題にどう対処すべきなのか。また、この生成AIを当たり前に誰もが使ってくる時代に、教師自身がそれをどうやって活用し、子どもに課題を出すべきなのかなど、親・子ども・教師にとって有益な情報が揃っていて、かなりおもしろかった。

ChatGPTをどう教育に活用するのか?

ChatGPTを使った教育を考えた時にもっとも有用なのは、「パーソナルな教師」になってくれる部分だろう。一般的に教師は決められたペースで授業を進め、一定期間ごとのテストで理解度をはかる。ただ、テストの正解率が80%であっても、フォローアップはないまま次の授業に進み、20%のギャップはそのままにされることがほとんどだ。最初はたいしたことがなくてもこのプロセスは何年も続き、教師は代数や積分でつまずく子どもをみて驚くことになる。本来であれば20%のつまずきがあった時点で不明点を解消すべきだが、個別対応できる教師がそんなにいるわけもなく、誰もが個別指導塾に通えるわけでもなく、これまではコスト的に不可能だった。

しかし、ChatGPTをはじめとした生成AIならそれができる。子どもたちはChatGPTに質問をする、あるいはテストを出してもらってそれに答え、わかっていない部分を洗い出し、そこを徹底的に、遡りつつ潰してもらうのだ。でもChatGPTを学生に使わせたらわかんない部分の答えを聞くだけで自分で考えなくなるじゃん? と思うかも知れないが、ChatGPTをはじめとした生成AIの一部は回答にあたってのルールを設定できるから、きちんとカスタマイズされていれば答えを教えず、問題の解き方や考え方を先導してくれるようにできる。それが著者らが作った「カンミーコ゚」だ。

たとえばカンミーコ゚に数学の問題──多項式の次数と最高次係数の求め方を教えてもらえますか? 3x²-5x²+2──を質問すると、『もちろん! まずは少しずつ考えてみよう。多項式の次数とは、変数(この場合はx)の最高乗のこと。最高次係数は次数がもっとも高い項の前にある数です。この多項式を見て、xの最大累数を持つ項と、その前の数字は分かる?』と返ってきて、その質問に答えられなかったりわからなかったりしたら、一歩ずつ戻って、わかるところからの指導がはじまる。

カンミーコ゚ではそれまでの会話も記憶されていて、たとえば利用者がサッカーが好きだという情報がインプットされていたら、多項式の問題を教えるときにも、サッカーになぞらえて説明してくれるようになる(君がサッカーのコーチだとしよう。毎週練習する時間に基づいてチームのゴール数をモデル化しようとしている……)。カンミーコ゚は全教科に対応しているから、たとえば歴史の勉強に取り組んでいるときも、サッカーの比喩を出したり、数学の時に出た話題や例を持ってきてくれたりもする。

こうした子どもの学習進捗は親も簡単に尋ねることができる。今日は何を何分やって、どこでつまずいて、どうやって解決したのかと言ったことも報告可能だし、当然対話形式でより深い情報を知ることもできる。親がAIとのやりとりを全部見ていることを知ったら子どもはAIに何も語らなくなるかもしれない。重要なのは保護者はまず見守ることであって──と、「ChatGPTの教育への活用」について考えた時、一般的な懸念事項(AIが誤情報を与える可能性についてどう考えるのかなどについて)はだいたい本書でも触れているので、細かくは読んで確かめてもらいたい。

AIの登場で人間の教師は不要になるのか?

そんなにAIが便利ならもう人間の教師なんかいらないんじゃね? と思うかも知れないが、著者の立場は一貫して「教師は不要になるどころか、ますます重要になる」というものだ。熱意を持って子どもたちと接する実際の人間、人と人との繋がりはAIで代替不可能のものであり、AIはあくまでも教師のサポート役なのだと。

これまでカバーできてこなかった、個別の理解の補修のようなタスクや進捗やモチベーションの管理の一部をAIが担い、その空いた時間を使って人間の教師は子どもとの個人的な繋がりを深めたり、創造的な授業を展開できるようになるだろう──と。

ペンシルベニア大学ウォートン・スクールで教えているイーサン・モリックは、生成AIの登場で、教師が行わなければいけないことは基本的に3つあると語っている。一つは、「子どもたちにたいしてこれまで以上に期待値を高くすること」。これはようするに、生成AI以前の社会と違ってこれから先は生成AIのサポートを受けて宿題やレポートを書くのが当たり前になるので、その質は向上するはずだ。つまり、生成AI以前よりもその成果物に対する期待値を高く保つべきだ──ということになる。

2つ目は、教師に「AIをもっと授業の課題に組み込むこと」だという。これから先の時代はもうAIと共に歩むのが当たり前になるのだから、学生には積極的にAIの活用を促し、学習においてのチームメイトのように扱うべきだと。3つ目は、「授業を反転させること」。これだけ読むと意味がわからないが、これはようするに、これまでのような壇上に教師があがって、生徒に語りかけるようなスタイルを変更することを意味している。じゃあ何をするのかといえば、子どもたちは動画やAIのサポートを活用して自分の好きな時間や場所で個別のマイクロレッスンを受け、実際の授業の時間はソクラテス的な対話や共同課題にあてるスタイルへの移行を促しているのだ。

おわりに

学習の形は、少年ー青年期の学校に限らず、その形をこれから数年で大きく変えていくのだろう。これから先の子ども世代は産まれたときから側にAIのチームメイトがいる状態で学び、育つに違いない。本書では未来の仕事に必要なことや、採用面接などがAIでどのように変わりうるかといった話も後半でしている。

たとえば、現在の仕事の採用は非常に非効率で完全なものではないが、学生時代から個性や能力をより熟知したパーソナルAIと企業側のAIが直接やりとりをすることで、より高い精度と速度で企業と求職者を結びつけてくれるようになるかもしれない。

本書は教育の未来について語っているだけでなく具体的に生成AIとの対話をどう教育にいかすのかといった(たとえばライティングの課題とかでも)事例がたくさん載っているから、「今すぐ自分の子どもにもこうしたやり方での学習をやらせてみたい」というご家庭でも役に立つだろう。




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