天気の悪い日が多かった今年の秋ですが、晩秋~初冬の11月になってようやく天気が安定してきました。新月期だった先週金曜日も終夜快晴の予報でしたので、いつもの公園に出撃です。

ところでこの公園、芝生の上の何ヵ所かに猛烈に明るいLED照明が立っていて、普段はこれが一晩中煌々と輝いているのですが……故障でもしているのか、先日から点灯しない状態が続いています。

目障りな照明がないなら、南に低い天体の撮影チャンス……ということで、まずはちょうこくしつ座の系外銀河NGC253を狙います。かなり大きく明るい銀河なのですが、東京からでは南中時の高度が30度に届かず、なかなか撮りづらいのです。季節的にM31やM33と被ってしまうのも残念なところで、どうしても忘れ去られがち。自分も撮るのは初めてです。

しかし毎度のことながら、本当に空が明るいです。撮影風景を撮ったこの写真でまともに見えているのが、みなみのうお座のフォーマルハウト(右側・1.17等)とくじら座のディフダ(中央・2.04等)だけという有様で、ちょうこくしつ座の星などは痕跡すら見えません*1。銀河はディフダの真下あたりにあるはずなのですが……。

22時ごろになったら鏡筒をFRA300 proに交換し、同じく南天の「魔女の横顔星雲」ことNGC1909を狙います。この星雲はオリオン座の1等星リゲルの光を反射して輝く反射星雲で、極めて淡い天体です。反射星雲の特性上、光害カットフィルターも効きづらく、都心から撮るにはあまりに難物。これについては「存在だけでも写ればいいな」くらいの期待値で、とりあえずの感触がつかめればOKくらいの気持ちで行きます。、

そして、明け方近くになったら再度鏡筒をED103Sに交換し、話題の恒星間天体「3I/アトラス彗星」を狙います。撮影場所の周りには写真のような木組みがあり、これが障害になって撮影できないことも覚悟していたのですが、幸い、天文薄明開始15分前くらいから彗星が木組みの陰から顔を出してくれて、どうにか彗星を含む領域を撮影できました。あとは処理でどうなるか?です。
リザルト
まずは、撮影枚数が少なくて処理も簡単な3I/アトラス彗星から取り掛かります。「撮って出し」はこんな感じ。

PHD2による彗星追尾で撮影しているので、恒星はわずかに尾を引いています。そして、画面内にはいくつか楕円銀河らしき光芒が。場所がおとめ座ですからね。ところで彗星はどこだ……?

……って、あの左側の楕円銀河っぽいのがそうか!(笑)
以前の2I/ボリソフ彗星の印象が強すぎて、恒星間天体がよもやこんなに明るく写るとは思いませんでした。
hpn.hatenablog.com
あらかじめ調べておかなかったのが悪いのですが、改めてCOBSで光度データを調べてみたら、現在はほぼ10等前後で見えているようです。彗星を完全に楕円銀河だと思い込んでいたせいで、構図がかなりズレてしまいました(^^;
正体が分かったので、そのままスタッキングして……はい、ドンッ!


2025年11月22日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain100, 300秒×3
ZWO UV-IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド(彗星追尾)
PixInsightほかで画像処理
スタックしたからといって、特段尾のようなものは確認できません*2。おまけにイオンによる青みもあまり目立たず、自分でやらかしたからいう訳ではありませんが楕円銀河と勘違いしたのも無理ない姿です。トリミングした2枚目の写真において、彗星のすぐ右側にある明るい2つの星の明るさが約10等なので、彗星の明るさもたしかにほぼ同程度と見てよさそうです。
それにしても、遥か彼方の宇宙空間を数十億~百数十億年も漂った果てに、地球からわずか2天文単位程度の距離を通過、さらにそれをアマチュアが簡単に捉えられるというのは、なんともロマンにあふれる話です。
次いで、ちょうこくしつ座の系外銀河NGC253。こちらはただでさえ高度が低い上に、撮ったのがまだ宵のうちで光害も激しく、なかなか厳しい条件です。南中時でも「撮って出し」だとこのありさま。

銀河の中心部は見えるものの南天低いために赤みが強く、さらに、全体的に光害に埋もれてはなはだ心許ない写りです。当たり前ですが、公園のLEDが消灯しているとはいえ、効果としては「光学系への迷光が発生しにくい」くらいのもので、残念ながら趨勢にはほとんど影響なさそうです。
とはいえ、写ってはいますのでモクモクと処理。まだMultiscale All-Sky Reference Survey (MARS)がカバーしていない領域のため、カブリ処理にMGCが使えないのは痛いところですが、そこはGCやGraXpertを駆使してカブリを除去。ストレッチを施して……はい、ドンッ!

2025年11月21日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃, Gain100, 300秒×32
IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
暗黒帯が複雑に入り組んだ、いかにも星形成が活発なスターバースト銀河らしい姿が浮かび上がりました。
地球からの距離は約1100万光年ほどで、地球から最も近い銀河群の1つである「ちょうこくしつ座銀河群」の中心メンバーです。この銀河にはおよそ2億年前に別の矮小銀河が衝突し、円盤を乱して現在のスターバーストを引き起こしたと言われています。

ちなみにアノテーションを入れるとこんな感じ。おとめ座付近の領域ほどではありませんが、背景に粉銀河がたくさん分布しているのがよく分かります。
さて、そして今回最大の難物、「魔女の横顔星雲」ことNGC1909です。「撮って出し」を確認すると……

笑ってしまうくらい何も見えません(^^;
まぁ、ここまではある意味予想通り。問題は星のハロが妙な形に歪んでいることです。まるでレンズ状銀河か何かのような……。なんだこれ???
……と、今さらしょうがないので、ハロの形がおかしいのは無視して処理を進めますが……いや、これマヂ無理orz
さすがの私も、ここまで酷いカブリは処理しきれません……というか、正確に言うならカブリに対して星雲が淡すぎ。星雲が見えるほどに強調すると、カブリの色むらが無限に湧いてきて収拾がつきません。それでもどうにかここまで処理しましたが……ここで断念orz

2025年11月21日 FRA300 pro(D60mm, f300mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -20℃, Gain100, 300秒×60
IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
星雲にしては明らかに不自然なムラが画像全体に走っていますし、さすがの自分もここが限界。まぁ、そもそもハロの形が変ですし、前述の通り無理さ加減が分かったので良しとしましょう。

ひとまず「魔女の横顔」も分かりますし(^^;
さて、このハロの変形についてですが、光害カットフィルターを傾いた状態で取り付けてしまったのが原因ではないかと推測しています*3。鏡筒交換の際、同時にフィルターも付け替えたのですが、暗い中でフィルター枠にセットする際、斜めにねじ込んでしまった可能性があります。フィルターをすでに取り外してしまったので確証はありませんが、この取り外しの際、フィルターのねじ込みを外したにしては枠からポロッと簡単に取れた気がしたので、ねじが中途半端に咬み込んでいたのかなという気がします。
今回は、迷光防止の意味も込めてFRA300 proのフードを延長しているので、それによる口径食の可能性も考えたのですが、口径食にしてはハロの伸びている方向が揃っていますし、その線は薄いんじゃないかと思います。
しかし、星雲自体がこれほど淡いのだと、近赤外での撮影も考えた方がいいのかもしれません*4。ASI2600MC Proの場合、赤外域の感度は必ずしも高くないのですが、光害のカット効果を考えると不利とも言い切れません。この目的には、本当はモノクロカメラがあれば理想的なのですが、ないものは仕方ないでしょう。
あとは、愚直に複数夜撮りためて処理するか……。正攻法ではあるのですが、家の都合と体力と……なかなか悩ましいところです(^^;
なお、この日は並行してサブ機の方で、例のSvbonyのデュアルナローバンドフィルターを用いた撮影を行っていたのですが、その話はまた後日。