前回の記事の続きです。
hpn.hatenablog.com
レビュー用のフィルターのテストがひとまず終わったのが20時40分ごろ。空は快晴だし、まだまだ時間もあるので、フィルターを再度「SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」(以下、SV220 Hα-OIII)に付け替え、鏡筒を次のターゲットに向けました。

狙いはカシオペヤ座の散光星雲「ハート星雲」Sh2-190と「胎児星雲」Sh2-199……海外だと「Heart & Soul」としてよく知られる領域です。
この領域を選んだのは、焦点距離的にちょうどいいのに加え、SHO合成でいかにも映えそうだから。この領域もちょうど2年前にL-Ultimateを使って撮っているのですが、当時はステライメージ9を処理のメインに据えていたので、PixInsightをメインにした今、表現がどう変わるのかも気になるところです。

しかし、空の状態は相変わらず。この夜は終始こんな感じで、肉眼だと2等星がギリギリ。ちょっと高度が低いとそれすら怪しく……。東の空に昇ってきたオリオン座の、三ッ星の中で一番暗い(といっても2.3等ある)ミンタカや、リゲルと反対側の足にあたるサイフ(2.1等)が見えづらかったのは驚きました(高度が上がってきたらさすがに見えましたが)。この夜は湿度が90%を切ることはなく、この水蒸気の多さが見え方に大きく影響したのでしょう。
夜半前にはフィルターを「SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]」(以下、SV220 SII-OIII)に交換し、撮影を継続。途中、薄雲の襲来で30分ほど撮影を中断させられましたが、それ以外は特に大きなトラブルもなく、午前2時半ごろの月の出をもって撤収となりました。
リザルト
先に撮影していた北アメリカ星雲の画像処理が終わってから、本格的に処理を行いました。
処理前の画像をASIFitsViewでオートストレッチした結果はこんな感じ。


1枚目のSV220 Hα-OIIIで撮った方はこの時点で星雲の姿がハッキリ分かりますが、2枚目のSV220 SII-OIIIの方は星雲の写りがすこぶる悪いです。フィルターの半値幅が広くてバックグラウンドが上がりがちなのに加え、そもそもHαに比べてSIIやOIIIの成分が少ないのが大きな原因なのでしょう。ぜいたくを言うなら、SII-OIIIは倍以上の露出が欲しいところです。
というわけで、前者はそれほど大きな問題なくすんなりと処理できましたが、後者については星雲のシグナルの低さと光害成分の大きさ、OIIIと光害の色の近さとに大苦戦。MGCだけではどうしても画像が平坦にならず、途中、三色分解してGraXpertをかけてみたり*1、パラメータを細かく調整してGCをかけ比較したりと、試行錯誤を繰り返す羽目になりました。
それでも粘って散々苦労した結果……はい、ドンッ!

2025年10月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 300秒×24, Svbony SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理

2025年10月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain250, 300秒×24, Svbony SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
……どうにか見苦しくない程度にはなったでしょうか(^^;
特に1枚目については、以前撮影・処理したときと比べると、露出時間が短いにもかかわらず淡い部分の表現は良い感じで、PixInsightの威力を感じます。頑張ればステライメージでも行けるのでしょうけど……。
それにしても、ちょっとグロテスクながらも本当に不思議な形です。特にSII-OIII画像の方は、SIIが星雲を縁取るように分布しているのが良く分かります。これらの星雲では、中心にある散開星団の若い星々からの恒星風でガスが吹き払われているといいますが、SIIばかりが外側に集中しているのはなぜなのでしょうか?


ちなみに今回は、以前の撮影時に紹介した系外銀河Maffei 1とMaffei 2、そして惑星状星雲WeBo 1もハッキリと分かります。特にMaffei 2は真っ赤に写っていて、シャープレスが銀河系内の天体だと勘違いしてSh2-197とナンバーを振ってしまったのも分かる気がします(^^; *2
そして、最後にお約束のSHO合成です。はい、ドンッ!

色が青っぽくなることもあってか、構造が引き立つ気がします。ハート星雲から左上に伸びる「尻尾」の部分のガスの絡まり合いなども、なかなか興味深いです。
そしてさらにここ!




複雑に混じり合ったガス、「魚の頭星雲(Fish Head Nebula)」(NGC896)やハート星雲中心部の繊細に入り組んだ暗黒帯、周囲が恒星風に吹き払われて形成された塵の柱に、ボック・グロビュール……もう、萌えどころしかありませんw こんなのを撮ったのが東京都心、かつわずか口径55mmの望遠鏡というのも痛快です。