以下の内容はhttps://hpn.hatenablog.com/entry/2025/10/22/190852より取得しました。


Svbony 「SV220 H-Alpha&OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」&「SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]」レビュー(実写編)

先日、Svbony Japan様から製品レビューの依頼を頂いた件について書きましたが、その後もなかなか晴れ間は訪れず、そうこうしているうちに発送の遅れていたもう1つのレビュー対象品「SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]」が送られてきました。


外見的には 「SV220 H-Alpha&OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」とほぼ同一*1


表側の反射が赤青2色に見えるのも同じです。




ちなみに透過波長域はこんな感じ。SII線(672.4nm)を透過する関係で長波長側のピークがHα線(656.3nm)より外側にシフトしているのに加え、ピークの幅も 「SV220 H-Alpha&OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]」(図下)と比べると明らかに広くなっています。これがどう影響してくるのか、気になるところです。



で、これが到着したのが17日の金曜日。そしてこの夜の東京は奇跡的に快晴の予想でした。夜半を過ぎて午前2時半ごろには月が昇ってきますが、テストはそれまでに済ませればいい話ですし、そもそもWindy(ECMWF, MSM)では夜明けにかけて雲が増えてくる予想だったので、大きな支障はないでしょう。


というわけで、日没と同時にいつもの公園に出撃してきました。


セットアップ


この日の鏡筒は「BORG55FL+レデューサー7880セット」焦点距離200mm、F3.6の明るい鏡筒です。


実は、今回テストしようとしているデュアルナローバンドフィルターは、干渉フィルターの常として斜めから入ってくる光に対して透過域が短波長側にずれるという性質があります。なので、今回のような明るい鏡筒で使用すると、特に極狭帯域のフィルターの場合、透過させたい波長の光が透過できなくなってしまう危険性が出てきます。


実際、「SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]」の製品ページにも「絞りf/4以上の光学システムに推奨されます。」と明記されています。

www.svbony.jp


しかし、以前VSD90SSのレビューの際に書きましたが、完全なスイートスポットからはズレるものの、F4より多少明るくても案外使い物になるもの*2

hpn.hatenablog.com


それに、いずれにせよ同条件での比較なので、大きな問題にはならないでしょう。



今回テストで用いる領域は、はくちょう座のデネブ~ペリカン星雲&北アメリカ星雲にかけての領域。星雲は、HαのみならずOIIIやSIIでも輝いていてナローバンド系フィルターを試すにはもってこいです。一方で、デネブの強烈な輝きはフィルターの反射に伴うゴーストやフレアを発生させやすく、厳しい条件が予想されます。


用いるフィルターは以下の3つ。

  • Optolong L-Ultimate
  • Svbony SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm](以下 SV220 Hα-OIII)
  • Svbony SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm](以下 SV220 SII-OIII)

特に、前2つについては特性もほとんど同じで、ガチの比較になります。



ただ、事前のお断りとして、鏡筒&カメラが1セットしかない*3ため、厳密な意味での「同時比較」にはなりえません。


一応、対象が天頂付近にある時間帯を狙い、光害の影響が少なくなるように気を付けてはいますが、星の日周運動を止められない以上、撮影ごとにどうしても条件の差は出てきます。加えて、天文薄明終了直後から撮影を開始しているため、夜空の明るさそのものにもわずかながら差が出ている可能性は否定できません。おまけに、上で書いたように、光学系のスペック的に「非推奨」の環境下でもあります。


というわけで、以下の結果を見る場合、細かい差異は気にしないようお願いいたします。


リザルト


まずは撮って出しの1コマから。なお、撮影条件はいずれもGain300、露出300秒で固定しています。


オートストレッチ後

L-UltimateとSV220 Hα-OIIIとの比較ですが、どちらも背景レベルが締まっている上に、レベル調整前から星雲の姿が確認できて、いかにもナローバンド系フィルターという強烈さです。ASIFitsViewでオートストレッチしただけでも、どちらも相当よく写っているのが分かります。


一方、SV220 SII-OIIIの方は明らかに背景レベルが高いです。上の2枚と同条件で撮っているので、半値幅が広い分、明るくなっているのだと思います。ただ、逆に言えば光害成分も同時に拾っているはずで、その影響が心配されるところ。星雲のSIIおよびOIII成分が比較的少ないため淡く、Hα以上に極端な強調処理が必要そうなことを考えればなおさらです。




ちなみに、撮っているのは例によってこんな空。大気の澄んだ真冬でもSQM = 16等台の数字を叩きだす酷い空ですが、この夜は湿度が高かったせいもあってか大気の透明度が悪く、肉眼での最微等級はおそらく2.5等も行かない感じ*4。これほど劣悪な環境でも星雲が写るのだから、改めてナローバンドフィルターというのは大したものです。



次に、これらを8コマずつ撮影したのち、PixInsightにてダーク引き、フラット補正、スタック(コンポジット)をし(WBPP)、色合わせ(SPCC)とオートストレッチ(STF→HT)まで済ませた画像がこちら。



さしものナローバンドフィルターとはいえ、東京都心の強烈な光害はいかんともしがたく、いずれも背景に大きな光害カブリが見て取れます。デュアルナローバンドフィルターが光害や月明かりに強いのは確かですが、それはあくまでも相対的な話で、まったく無関係というわけには行きません。そこは誤解しないよう注意が必要です。


なお、フィルターによってカブリの影響が違うように見えますが、これについては前記のように撮影時間帯や撮影対象の高度の違い、オートストレッチにおける強調度合い、さらにはフラットのわずかなズレなども関係してくるので一概には言えません。なんとなく、スペック通りSV220 SII-OIIIにおける光害カブリの影響が一番大きそうな感じはしますが。



次に、上記画像について、スタック後の段階でカブリを取り(MGC)、色合わせ&オートストレッチをしたのがこちら。いずれも見事な写りです。



L-UltimateとSV220 Hα-OIIIについては、星雲の写りはほぼ同等で、大まかに見て明確な差は認められません。SV220 SII-OIIIについても、青い北アメリカ星雲は新鮮で、赤いSIIもよく写っているように思います。なお、恒星についてはSV220 SII-OIIIにおいて存在が目立ちますが、これは強調度合いの違いに加え、おそらく半値幅の違いも影響しているのでしょう。


で、問題のデネブの写りですが……意外にもというか期待通りというか、これは明確な差が出ました。



驚くべきことに、SV220 Hα-OIIIが最も優秀な結果です。


L-Ultimateではデネブのゴーストがハッキリ丸い形を描いて写りこんでいるのに対し、SV220 Hα-OIIIではほとんど分かりません。こうしたゴーストはフィルター~センサー間ないしフィルター~レンズ間の反射が原因で発生するもので、カットする光量が多い(=反射する光量が多い)ナローバンド系フィルターでは宿命とも言えるものです。これが目立たないというのは、とりもなおさずフィルターの表面処理が優秀ということで、安価なSV220 Hα-OIIIがよもやこれほどの成績を収めるとは思いませんでした。


SV220 SII-OIIIも強調度合いの割には優秀で、このくらいのゴーストなら大して気にならないと思います。



ガチで処理してみる


……と、ここまでで大体の基本性能が分かったので、次にこれらをガチ目に処理して作品として仕上げてみます。


カブリについては、GCやGraXpertなども駆使してより平滑化。ノイズもGraXpertで取り除いておきます。恒星像はBXTで形を整え、StarNet2で背景と分離。一方で、星雲を含む背景は、各チャンネルごとにSilver Efex Pro 2の「高ストラクチャ(強)」で強調処理を施し再結合。最後に背景レベルを整え、恒星像と再合成して……はい、ドンッ!




2025年10月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 300秒×8, Optolong L-Ultimateフィルター使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理



2025年10月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 300秒×8, Svbony SV220 H-Alpha & OIII デュアルナローバンドフィルター [3nm]使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理



2025年10月17日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 300秒×8, Svbony SV220 SII & OIIIデュアルナローバンドフィルター [7nm]使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理

いずれも、東京都心からわずか40分の露出で捉えたとは思えない写りです。


L-UltimateとSV220 Hα-OIIIとでは星雲の表現力にほぼ差はありませんが、やはりデネブのゴーストの分、後者に軍配が上がる感じ。実売5万円を切るフィルターでこれというのは、本当に驚くべきことだと思います。


また、SV220 SII-OIIIも、半値幅の割にはなかなかの迫力。ただ、こちらは光害カブリの処理に相当苦労しました。このあたりは半値幅の広さに加え、光害自体が青っぽくてOIIIと区別しにくい*5のが仇になった感じで、こちらについても半値幅3nm版の登場が期待されるところです。


おまけ


SIIとHα、OIIIのデータが揃ったとなれば、俗に言う「ハッブルパレット」……SHO合成*6を試してみたくなります。


この場合、SV220 SII-OIIIではRチャンネルにSII、G, BチャンネルにはOIII、SV220 Hα-OIIIではRチャンネルにHα、G, BチャンネルにはOIIIが写っています。そこで、これらの画像を各チャンネルに分離したのち、SIIをRチャンネル、HαをGチャンネル、OIIIをBチャンネルに割り当てれば、いわゆる「ハッブルパレット」が完成します。なおOIIIについては、撮影画像のGチャンネルおよびBチャンネルに写っているので、これらをブレンドすればOK。


ただ今回の場合、SV220 Hα-OIIIの半値幅が3nmと狭いのに対し、SV220 SII-OIIIの半値幅は7nmと広く、後者で撮った画像はS/N比的に不利です。そこでやむを得ず、OIIIのデータについてはSV220 Hα-OIIIで撮った画像からのみ抽出することにしました*7。つまり、

  • R:SV220 SII-OIII SII画像
  • G:SV220 Hα-OIII Hα画像
  • B:SV220 Hα-OIII OIII画像

ということです。



ただ、この組み合わせで単純に合成すると、Hαが強いために画像全体が圧倒的に緑色になってしまい、不自然極まりないです。そこで、NarrowbandNormalizationを用いてSIIやOIII成分をブーストしたりSCNRで緑を控えめにしたりして……はい、ドンッ!




なにしろ初めてのSHO合成&処理なので、色々弄っているうちに正解がどんどん分からなくなってしまいました*8。果たしてこれでいいのかどうか……(^^; とはいえ、雰囲気は出たように思います。


ちなみに、この夜は他にも撮影しているのですが、その結果はまた後日。

*1:フィルターが青く見えるのは、フィルター本体に貼られている保護シールのため

*2:実際、上記鏡筒+L-Ultimateの組み合わせで今まで散々撮ってきています。

*3:どこぞの「邪道流師範」あぷらなーと氏のようにはなかなか行きませんw

*4:光害がマシになる0時ごろでも、天頂付近にあったマルカブ(アンドロメダ座γ星, 2.1等)やハマル(おひつじ座α星, 2.0等)がギリギリだったので、当たらずも遠からずといったところでしょう。

*5:特にGraXpertは青~緑色を優先的に光害と判断しがちなようで、星雲のOIIIがゴリゴリ削られてしまって使い物になりませんでした。

*6:日本国内だと、おそらく歴史的経緯から「SAO合成」ということが多いです。「A」は「H Alpha」の「A」。ちなみにSHO合成の「H」は「H alpha」の「H」で、海外ではこちらの呼び方が主流。Hβと区別がつかなくなりそうなものですが、Hβは単独ではナローバンド撮影でめったに使われないので、大きな支障はないのでしょう。

*7:フィルターが同スペックで揃っていれば、OIIIについては双方の画像から抽出でき、「のべ撮影時間」が大きく伸びて画質的に有利になったのですが……。

*8:どのみち疑似的な着色なので、正解もクソもないのですが。




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