19日は平日ですが、Windy(ECMWF, MSM)、SCWともにまずまず晴れの予想。とりあえず、雷雨の心配もなさそうです。本当の新月を狙うなら週末ですが、晴れる保証もありませんし、平日ですがいつもの公園に強行出撃してきました。

ところが、到着してみると西~北の空にかけて薄雲が天頂にかけてしっかり広がり、あまり撮影向きの空模様ではありません。気象衛星からの写真を確認すると、どうやら秩父・奥多摩方面で立ち上がった積乱雲の高層部が流れてきているようです。まさに夏場特有の雲ですね。
しかし、この手の雲はたいてい夜半前には取れるもの。この日も、21時を回る頃にはほぼ雲が消えて撮影できそうな感じになりました。

この日も、前回と同様2台態勢で臨みます。機材構成も同じで、
- ED103S(SD103SII相当改造済)+LPS-D1+ASI2600MC Pro+SXP赤道儀
- 「BORG55FL+レデューサー7880セット」+L-Ultimate+ASI533MC Pro+赤道儀化AZ-GTi
の2台です。「BORG55FL+レデューサー7880セット」とASI533MC Proの組み合わせは地味にお気に入りで、焦点距離が200mmと短く貧弱な架台でもちゃんと追尾できる上、それなりの画角が得られ、さらにF値も3.6と明るいので想像以上に使い勝手が良いです。
ただ、悩ましいのはL-Ultimateが手元に1枚しかない点で、撮れる天体にどうしても制限が出てしまいます。以前使っていたIDASのNebulaBooster NB1フィルターを引っ張り出してきてもいいのですが、L-Ultimateの威力を知ってしまうと今さら感がどうしても……。とはいえ、さすがにもう1枚買うのはコスパ的に難ですし、どうにか使い分けていくしかないでしょう。

この日は、メイン機材ではくちょう座の「まゆ星雲」ことIC5146、サブ機材でケフェウス座の「ライオン星雲」ことSh2-132を狙う予定です。IC5146の方は反射星雲の成分もありますし、非ナローバンドで撮るには最適でしょう。

それにしても、雲が取れたとはいえ湿度は高く、白く霞んだ眠い空です。温度もかなり厳しく、21時ごろでも地表温度は軽く30℃オーバー。こちらはローチェアに座っているので地面からも炙られ、体感温度はかなりのものです。

一応、水冷服を着ていた上、持参していたUSB扇風機で風を送っていたのでなんとかなりましたが、気象庁のデータ(上図)を見ても、この日は熱中症の危険度が一晩中「厳重警戒」のレベル。実際には上記の通り、さらに地面からの熱もあってかなり過酷でした。もはや天体撮影も命がけになりつつあるような……。

夜半過ぎには子午線反転……なのですが、ここでサブ機の方にトラブル発生。ASCOMドライバがエラーを吐いて、撮像ソフトのN.I.N.A.から制御不能になってしまいました。結局、ソフトをすべて再起動することで復旧できましたが、この機材については明け方頃にも再度同様のエラーを吐いて死亡。一応、翌日SynScan Appやドライバを念のため最新のものに入れ替えましたが……果たして解決するのかどうか……?

と、最後にドタバタしましたが、3時半には天文薄明が始まり、ここで撤収となりました。東の空には月齢26の月と木星、金星が明るく輝いています。
ちなみに、この夜は九州方面で特大の火球が流れたり、関東でも「はくちょう座κ流星群」に属すると思われる火球が見えたりとなかなか騒がしい夜だったのですが、残念ながらリアルタイムでは全く気付かず。特に後者の火球については場所的にも見られる可能性はあったのですが、南を向いて座っていた上、西~北の見晴らしはそれほど良くなく、おそらく空を見ていても気づかなかったことでしょう。
流れ星というのは、どうも見ていない時&方向にばかり流れるような……( ̄w ̄;ゞ (偏見
リザルト
……というわけで(?)、まずは処理が容易なサブ機の方から。
さすがはL-Ultimate、こちらはカブリ処理も簡単です。おまけに55FLのイメージサークルの中心付近のみ使っているため、周辺減光も小さく処理は楽ちんです。
常法通り処理して……はい、ドンッ!

2025年8月19日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D55mm, f200mm) 赤道儀化Z-GTiマウント
ZWO ASI533MC Pro, 0℃
Gain300, 180秒×96, Optolong L-Ultimateフィルター使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
「ライオン星雲」の愛称通り…… テッテ~♪ ホントに ホントに ホン(ry
いや、実に見事な造形です。ここまでしっかり「ライオン」だと、もはや言うことがありません(笑)
この星雲が珍しいのは、「上半身」がHαで輝いているのに対し、「下半身」はほぼOIIIで輝いている点です。

表記されているものは、Abell 79以外はすべて散開星団。
アノテーションを入れたのがこちら。星雲の輝きには特殊な青色巨星である「ウォルフ・ライエ星」(WR星)が関わっていて、下半身はWR 152、上半身はWR 153abとそれぞれ2つのWR星が役割を担っています。WR 152については、その強烈な恒星風によって周囲のガスが吹き払われ、泡構造が形成されているのが見て取れます。カシオペヤ座のバブル星雲のそれと同じようなものです。
Heckathorn, J. N.ら*1によれば、WR星を取り巻く星雲は、初期のWR星を取り巻くものはOIII > Hα+NII、晩期のWR星を取り巻くものはHα+NII > OIIIという傾向があるそうなので、上半身と下半身のこの見事なコントラストはそのあたりが影響しているのかもしれません。
一方、上半身にあるWR 153abの方は、星雲に明確な泡構造は見当たりません。星雲の水素原子を励起しているのはWR 153abに加え、星雲内に埋もれた、複数のO型星を含む散開星団が大きな役割を果たしていると考えられています。上の写真中に示したTeutsch 127、SBB 1、SBB2などがそれで、SBB 2はその東側(左側)に弓状のバウショック(衝撃波面)が見えます*2。高エネルギーの恒星による強烈な恒星風が吹き荒れている証拠です。

また、写真の左下にはAbell 79という小さな惑星状星雲が見られます。「環状星雲」M57を彷彿とさせる楕円形の星雲で、現在も秒速約13kmの速度でガスが広がっています。解像度の関係もあってこの写真では見えませんが、星雲中心にある星は低温の矮星で、周囲のガスを電離させるにはエネルギーが足りません。そのため、実際には目に見えない高温の伴星があって、これがガスを電離させているものと考えられています。
次いで、メイン機で撮影していた「まゆ星雲」IC5146ですが……こちらは光害によるカブリがなかなか酷く、修正が極めて困難。以前撮影したときは、反射星雲や分子雲を追求せずあっさり目に仕上げたので破綻しなかったのですが、強調処理を突き詰めようとするととんでもない難物に化けますね、これ……。
結局、どこまでが光害でどこからが分子雲なのか全く分からず、適当なところで匙を投げざるをえませんでした。先日のアイリス星雲のようには甘くありません。前述のように空の透明度が悪かったのもかなり影響していた印象で、高度のペナルティはあれど、秋~冬の大気が澄んでいる時期に再挑戦するべきかもしれません。
一応、処理してみた結果はこんな感じ。

2025年8月19日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, 0℃
Gain100, 300秒×60, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
星雲本体を取り巻く分子雲の片鱗はなんとなく見えているので、その意味ではまずまずなのですが、なまじ淡いところを炙り出した影響で暗黒星雲の暗さが和らいでしまい、作品としては中途半端な印象に。この方向で攻めるなら、さらに数倍の露出が必要そうなことはよく分かりました(^^;

まぁ、元画像(ASI FitsViewによるオートストレッチのみ)がこんななので、そもそもが「高望みしすぎ」というのも確かなのですが
それにしてもこの星雲、以前も書きましたが何度見ても「まゆ」というより「梅干し」にしか見えません。日本人的には「空飛ぶ梅干し星雲」にでもした方がしっくりきそうな気がします(笑)