先の水曜深夜に引き続き、中1日で金曜を迎えました。
この日は、Windy(ECMWF, MSM)の予想では宵のうちからまずまずの天気ということで、出撃の準備をしていたのですが……夕方ごろから秩父・奥多摩方面の雲が流れてきて、あっという間に北天を中心に空の半分以上が雲まみれに。この時点で半ば諦めたのですが、気象衛星からの画像を見ていると雲の移動が案外速い……。
ダメ元で出撃してみると……

現地到着とともに見事に快晴!諦めずに出撃して良かったです。後悔なら、文字通り後からできますからね。
さて、この日は宵のうちからたっぷり時間を取れる&撮りたいものも色々あるということで、「SXP赤道儀」と「赤道儀化AZ-GTi」の2台態勢で行くことは事前に決めていました。ただ、直前まで天気の先行きが不明だったため、色々なケース*1を考えて鏡筒はミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(f = 200mm)、FRA300 pro(f = 300mm)、ED103S+SDフラットナーHD(f = 811mm)の3通りを持ち出すという、手押し台車の積載能力を試すようなアホなことに(笑)

しかし問題なく快晴になったので、結局、当初の予定通りミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55+ASI533MC proとED103S+SDフラットナーHD+ASI2600MC Proとを用いることになりました。前者ではいて座の「オメガ星雲」ことM17を狙い、後者は……まだ「秘密」ということで。
オメガ星雲 M17
オメガ星雲の方は、実は過去にデジカメで2度ほど撮ったことはあるのですが、なにしろ本当に大昔なので、今の機材、技術で撮ったらどうなるのかという興味が。
こちらは散光星雲なので、L-Ultimateを使用します。反射星雲の写りや恒星の色味は期待できませんが、淡いHII領域をどこまで炙り出せるか楽しみです。
また、赤道儀化AZ-GTiを、冷却カメラでの本格撮影に使うのもほぼ初めて*2なので、試運転的な意味もあります。なお、架台の極軸合わせにはSXP赤道儀同様PoleMasterを用いますが、いつもその固定方法に悩まされていたので、今回はこんな細工を。

以前シュミットさんで取り扱いのあった、ステラーテック・サイエンス社の「ShaftCube」にゴムブロックを貼りつけ、反対側の3/8"ねじ穴にはエツミの「1/4インチ-3/8インチ スクリュー」を装着。ここにPoleMasterのアダプターを取り付けます。

こうすると、ShaftCubeをウエイト軸最上部まで上げたとき、ゴムブロックが架台本体と接触し、PoleMasterの向く方向が極軸と一致するというわけです。まぁ、有り体に言ってしまえば、アイベルさんで取り扱っている「AZ-GTi用ポールマスターアダプター」のマネなのですが(^^;

(参考)「AZ-GTi用ポールマスターアダプター」

過去、上の写真のように「ウエイト軸カメラ雲台」などを用いてPoleMasterを取り付けたりしていましたが、この場合、架台の極軸とPoleMasterの向きとがなかなか一致せず、極軸合わせにかなりの苦労を強いられてきました*3。今回、これを使うことで極軸合わせは格段にスムースになりました。
あと問題が発生するとすれば、大昔の「低重心ガイドマウント」を流用した高度・方位調整機構の強度ですが、まぁ、なんとかなるでしょう……なるかなぁ……なるといい
追尾精度を考えて、1コマ当たりの露出は3分に抑制。準備段階でAZ-GTiとのWiFi接続がなぜか切れて無反応になったり、バックラッシュの大きさゆえPHD2のキャリブレーションやガイドアシスタントがなかなか終わらなかったりとトラブルもそれなりに発生しましたが*4、撮影が始まってしまえば動作は安定。

写りも、撮って出しの状態でもこれで、かつガイドの流れも見られず大いに期待できます。
結局、この日撮影したのは42コマでしたが、明らかに追尾失敗しているのは2コマだけという、想像以上の勝率でした。これなら、FRA300 proあたりでも使い物になりそうな気がしますね。
さて、撮れたデータをWBPPに放り込んでダーク引き、フラット補正&スタッキングしたのち、ゴリゴリ強調処理を行って……はい、ドンッ!

2025年7月25日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D60mm, f200mm) 赤道儀化Z-GTiマウント
ZWO ASI533MC Pro, 0℃
Gain300, 180秒×40, Optolong L-Ultimateフィルター使用
32mm F4ガイドスコープ+ASI290MM+PHD2によるオートガイド
PixInsightほかで画像処理
簡易な架台を使って撮ったとは思えないほど、しっかりした写りです。肝心のM17も、周囲の淡いガスに囲まれて、形の境目が分からなくなりそうなほど。

ちなみに「オメガ星雲」という愛称の由来ですが、明るい中心部を倒立像で見たときにギリシア文字の「Ω」に見えるから、ということのようです。「水面に浮かぶ白鳥」に見立てた「白鳥星雲」という愛称も有名で、個人的にはこちらの方がしっくりきます。……あるいは「エビフライ」とか(ボソッ
そして、画面全体を埋め尽くすHII領域の多さたるや!周囲にガスが漂っているのは知っていましたが、よもやここまでとは。

アノテーションしたのがこちらですが、名前のついていない領域が「これでもか!」というくらいあります。この中でちょっと毛色が違うのは「RCW 159」という天体。この天体はHII領域としてカタログ化されましたが、後に、これが超新星残骸(SNR)「G015.1-01.6」の電波放射と一致していることが分かり、この天体が超新星残骸を光学的に検出したものであることが確定しました*5 *6。なお、この天体までの距離は約7000光年。地球からM17までの距離が約5000光年と言われているので、それよりも後ろにあることになります。
*1:北天がダメな場合など
*2:過去にデジカメで簡易撮影を行ったことはありますが、いずれにしても数時間におよぶ撮影は初めてです。
*3:原理的には、両者が一致している必要は必ずしもないのですが、PoleMasterの画面に北極星が入らない、両者のズレが大きすぎて操作中に北極星が画面から飛び出してしまうなどといった問題が頻発していました。
*4:メイン機材とあわせて2台を同時展開したので、注意力が散漫になっていた部分もあります。
*5:Boumis et al. (2008) "First optical detection of the supernova remnant G 15.1-1.6", A & A, 481, 705-712. https://www.aanda.org/articles/aa/pdf/2008/15/aa9156-07.pdf
*6:ちなみに論文の著者たちは、自分たちが言及したHII領域が既に「RCW 159」としてカタログ化されていることを知らなかったそうです。まぁ、一口にカタログと言っても無数にありますからね……。