例年ならとうに梅雨入りしている時期ですが、関東はいまだにその気配すら見えません。晴天の日も予想以上に多く、13日木曜の夜も快晴の予想が出ていましたので、平日ですがいつもの公園に強行出撃してきました。
もっとも、この日は上弦直前の月が夜半近くまで残る上、夏至間近ということで翌2時37分には早くも天文薄明が始まってしまい、大した撮影時間は取れません。そこで、月明りの影響を比較的受けづらく、かつ短時間で撮影できる天体に対象を絞ることにします。
……必然的に「メシエ天体リスト」を埋めるのに格好の環境ですね

まずは夏の空の「地味天」の1つ、散開星団M18から。地味過ぎて「オメガ星雲」M17とセットで撮られることが多い対象ですが、あえて単独で狙ってみます。そのあとは同じく「地味天」の散開星団M26、対照的に華やかな散開星団M11と移っていきます。

ひと通り散開星団を撮影した後は、「プロソフトン クリア」フィルターを取り外して、いて座の球状星団を狙います。M69、M22と撮影していきますが……さすがに地上高度が低いです。時刻的に南中を過ぎてしまっていることもあり、高度は軒並み20度前後。果たしてこれでどの程度写るでしょうか……。
そうこうしているうちに、気づけばあっという間に天文薄明開始。ここで撤収となりました。さすがは夏至直前。早めに引き上げられるのは体力的にはありがたいですが、少々物足りないというのが偽らざる感想です(^^;

ちなみにこの日は、先日買い足したガイド鏡のテストも兼ねて、赤道儀化AZ-GTi+「BORG55FL+レデューサー7880セット」も同時展開していました。さそり座のM6 & M7を狙うつもりだったのですが……極軸設定に手間取り、撮影する頃には天文薄明直前で高度が10度ちょっとというありさま。光害が酷く、星の写りが悪すぎて構図確認もろくにできず、後で確認すると方向が赤経方向にずいぶんとずれていました。

2024年6月14日 ミニボーグ55FL+レデューサー0.8×DGQ55(D60mm, f200mm) 赤道儀化AZ-GTiマウント
Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出60秒×5コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用
32mm F4ガイドスコープ+Lodestar+PHD2によるオートガイド
PixInsight, ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
それでも一応、星は点像になっていますし、ログに異常も見られなかったので、ガイドシステムの動作としては十分と見ていいでしょう。
リザルト
というわけで、本命の方の撮影結果です。撮影順にまずはM18から。

2024年6月13日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain100, 60秒×24, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W), ZWO UV/IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
M18はいて座にある明るさ7.5等、視直径9分角ほどの小さな散開星団です。星の数が少ない上、周囲には天の川の微光星がびっしりとあるため、カタログ番号が若い割にまったく目立ちません。「オメガ星雲」M17の「添え物」的に扱われてしまうのも仕方ないところかもしれません。
しかし、こうやって単独で撮ってみると、周囲に点在する暗黒星雲も含め、案外きれいなもの。ちなみに左下(南東)が明るくなっているのは、この方向に天の川がひときわ明るい領域「いて座スタークラウド」があるため。また、右上(北西)にはHII領域であるIC4701がうっすらと見えています。

2024年6月14日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain100, 60秒×24, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W), ZWO UV/IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
お次は、たて座にある明るさ8.0等、視直径15分角ほどの散開星団M26。そもそもたて座自体が地味な上、こちらもM18同様、天の川の微光星に埋もれて目立ちません。それでも、ささやかなその姿は、華々しさこそないものの「いぶし銀」の輝きといった趣です。
また、たて座のこのあたりは「スモールスタークラウド」と呼ばれる天の川の明るい領域で、周囲に暗黒星雲が走っているのも興味深い眺めです。

2024年6月14日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain100, 60秒×24, ケンコー・トキナー PRO1D プロソフトン クリア(W), ZWO UV/IRカットフィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
散開星団の最後は、同じたて座にある「野鴨星団」ことM11。こちらはM26とは対照的に明るく(5.8等)華やかな星団です。球状星団と見紛うほど星が密集していて、散開星団の密集度としては最も高い部類に属します。
英語圏では、この密集した星々を「群れを成して飛んでいる鴨」に見立てて"Wild Duck Cluster"という愛称で呼んでいて、日本でもこれを直訳した「野鴨星団」という呼び方をされることがあります*1が、正直、それほど普及している感じはしません……というか、どこをどう見ると「群れを成して飛んでいる鴨」に見えるのか、さっぱり分かりません(笑)
この星団も天の川の濃いところにあるため、背景には微光星と暗黒星雲がたっぷりで、写真に撮るとにぎやかです。また、右上(北西)にあるオレンジ色の恒星HD174208と青いHD174005との取り合わせも、にぎやかさに花を添えています。
それにしても、さすがは天の川中心部というべきか、暗黒星雲がそこかしこに漂っているのは迫力ですが、都心で分かる程度に写るというのも嬉しい誤算。冷却カメラ様様です(^^)
お次は球状星団。


2024年6月13日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 30秒×60, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
M69は視直径が小さい上、南の空低いために見逃されがちな天体です。カタログ的には視直径9.8分*2となっていますが、明るいコアの部分は3分角ほどしかなく、本当なら長焦点鏡を使いたいところです。それでも、ぽつんと輝いている感じは、これはこれで味があります。

2024年6月13日 ED103S(スペーサー改造済)+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀
ZWO ASI2600MC Pro, -10℃
Gain300, 30秒×60, IDAS LPS-D1フィルター使用
ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド
PixInsight、ステライメージVer.9.0oほかで画像処理
対照的に、こちらは巨大なM22。明るさ、大きさとも有名なヘルクレス座のM13にも匹敵します。球状星団の密集度合いを示す「シャプレー・ソーヤー集中度」では、全12段階のうちのVIIに相当し、ほどほどの密集度合いということになります。
無数の星が集中している様子は、まさに圧巻というほかありません。どうしてこんな構造が出来上がったのか、本当に不思議でなりません。

撮影済みのメシエ天体は、これでようやく100の大台に到達しました。残り8個。今年中にはなんとかコンプリートできるでしょうか……?
*1:SkySafariなどをはじめとした海外製アプリの普及も影響していそうです。