
『持たざる者』金原ひとみ
集英社[集英社文庫] 2026.02.12読了
震災を契機にして何かが変わってしまった。何かを決定的に失ってしまった。修人は結婚生活を、千鶴は子供を、エリナは人の縁を、朱里は理想の家を。少しづつ重なりあう4人がそれぞれの視点で語る連作短篇集のようになっている。
エリナはかつて、楽しい日々を過ごすことが自分を生かしていると思っていた。しかし「楽しいということはもうそれほどの麻薬ではなく、楽しさの先にある虚無を知っている」と言う。これってすごくわかるかも。楽しいことが永遠に続くわけではなくて、それが終わった時にふと虚しさを感じる。そしてまた次の楽しみをまた探す、考える。楽しさを感じているその時も、次のことを考える、その永遠の繰り返し。
何かひとつのきっかけで人間の人生なんてガラッと変わる。この作品では東日本大震災だけど、コロナだったり、事故だったり、それこそ他人からのたったひと言の言葉でも。そういうガラッと変わる人生をどのように生きていくのか、何かひとつ軸にするものを持つことが大切だと感じた。そしてそれは誰にでも起こり得る。
この作品が単行本で刊行されたのは2015年なので、およそ10年ほど前の小説である。金原さんが最近書く作品に比べると少し大人しいような印象を受けた。さくっと程良い読み心地で、ちょうど自分の気分にぴったりだった。