
『秘密にしていたこと』セレステ・イング 田栗美奈子/訳
アストラハウス 2025.11.08読了
今年の春に読んだセレステ・イング著『密やかな炎』がおもしろかったから、著者の小説でもう一冊邦訳されているこの作品を読んだ。
ある事件が起こり、そこから過去を追想していく構成は前作と同様だ。雰囲気もとてもよく似ている。もちろん同じ作家が書いているから当たり前なのだが、同じ作品かと見紛うほど。訳者は別の方なのに不思議だ。
リディアという16歳の少女が湖で溺死体で見つかった。この衝撃的な場面から始まる。家族であるのにどうして誰ともわかりあえなかったのか。いや、家族だからこそ秘密があって、それは良い意味でも悪い意味でもあるけれど、この家族ではそれが全部悪い方悪い方にいってしまい想像を絶する苦しさに胸が痛む。家族だからといってなんでも理解しあえるわけではないことに皆が気付くべきで、そのために友人や他人がいるのだと思う。
両親の人種が異なる家庭の子どもたちは、自分の居場所を探すのに苦しむことが多い。(229頁)
家族内だけの問題ではない、この作品には人種と人権についての問いがある。父親ジェームズと母親マリリンが出会わなければ良かったのか、マリリンの母親の言うとおりにしていれば良かったのかなど、悔いても悔いても答えは出ないが、社会構造というか人権問題のせいでこのような悲劇が生まれてしまったと思わざるを得ない。
家族それぞれの秘密が明かされていき、それはそれはかなり重たいものだった。ミステリーやサスペンス要素もあるが、これはやはり文芸作品だ。好みの作風だから読んで良かったとは思うけれど『密やかな炎』のほうがオススメかな。