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『海風クラブ』呉明益|どんなに人間があがいても自然には勝てない

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『海風クラブ』呉明益 三浦裕子/訳

KADOKAWA  2025.10.18読了

 

ういえば呉明益さんは物語るだけではなく絵を描くことも上手だった。過去の繊細な画(『自転車泥棒』の緻密な自転車のような)ではなく、今回の表紙の画は絵の具で塗りたくったような感じ。呉さんによるあとがきで、ルドンの絵をオマージュというか倣って描いたものだと知った(ググって納得!)。表紙からは子どもの冒険ファンタジー的なものを想像していたけれど全然違った。

 

、この表紙の海坊主みたいなものの正体は、巨人ダナマイである。巨人の身体の中を山のなかの洞穴と勘違いしてそれぞれ別の場所から入った少年と少女。少年は白い犬を追いかけて、少女は兎の後を着いていって。2人は出会いしばらくして外に出る。

 

が過ぎて小さな集落「海豊村」が舞台となる。自然豊かな土地であるが、セメント工場が建設されようとしていた。洞穴で出会った2人は再会するのか。彼らだけではなく、首曲がりユダウ、新任教師小美、カラオケ店オーナーナオミなど、多くの人物の小さな物語の欠片が折り重なる。それだけではない、自然界のもの、巨人やカニクイマングース、樹木までもが擬人化される。いや、我々人類が擬人化というだけで本来はどんなものにも意識はあるのかもしれない。とにかく登場人物(生物)が多くて結構こんがらがってしまった。

 

自然の環境では、天災に遭うことで再生が始まる場合がある。(83頁)

結局のところ、どんなに人間があがいても自然の力に勝るものはないということを改めて気付かされる。

 

さんの作り出す世界観に魅了される。幻想的な優しさが文章のそこかしこにある。呉さんが何かを例えるのが好きだ。例える対象も、言葉のセンスも。神話のようで厳か、ファンタジー感満載なのに、なぜか落ち着くこの空気感。

 

豊村は台湾東部に実在する和平村をモデルとしているそうだ。セメント工場の巨大なタワー施設があったとか。訳者の三浦裕子さんは楊双子著『台湾漫遊鉄道のふたり』で日本翻訳大賞を受賞されている。とても読みやすいうえに、呉さんの息づかいが感じられそうな心地良い文体が心に響く。

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