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『フィールダー』古谷田奈月|ゲームの世界と現実世界の釣り合わなさ、が良い

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『フィールダー』古谷田奈月

集英社集英社文庫] 2025.09.09読了

 

自身はゲームを全くやらないから、この手の作品を熱望することはほとんどないけれど、小説の中で興味津々になることはままある。耳慣れないゲーム用語が飛び交う知らない世界なのに。おそらくゲームマニアの人なら共感できる部分が多くて一気に没入できるだろうが、そうでない人を巻き込む筆力はさすがである。ゲーム自体を作る小説、ガブリエル・ゼヴィン著『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』を読んだときにも同じように夢中になれた。

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人公の39歳の橘泰介はスマホゲーム「リングランド」にハマり毎晩アクセスする。そこで繋がった仲間たちと敵を倒す戦闘ゲームにのめり込む。現実の橘は出版社で働く副編集長である。親しくしていた児童福祉専門家の黒岩文子からのメールの告白文に驚く。黒岩は小児性愛を疑われ家を飛び出したというのだ。

 

想空間であるゲームの世界と現実の児童虐待の問題がどうにも釣り合わないというか、そこを繋げるのか!という作者の心意気に良い意味で眩暈がする。登場人物らは何らかの対象を「かわいい」と思っている。そこには語弊というか齟齬があるのだか、誰かをまたは何かを「かわいい」と思う気持ちは、字面だけの意味合いではなくて、ただただ好きで、ただただ愛おしく、ただただ大事にしたいという本能なんだ。そこには何の企みもない。

 

岩とアカツキという児童が知り合ってまだ間も無い頃、黒岩が「福祉」という言葉の意味を話すシーンがある。当たり前のように使っている言葉だけど、ちゃんと考えたことがなかった。いや、子どもの頃は気にしていた気がするなぁ。日常の言葉っていつのまにかただの単語になってしまい、ちょっと怖くもある。「祉」という漢字には「神様の恵みがからだにとどまる」という意味があるようで、こうした一つ一つの漢字に込めた思いや意味を知ると、自分が発する言葉にも責任を持たなくてはと思う。

 

見して、てんでバラバラな破片たちが、いつの間にか繋がるというかうまくまとまっていく。想像だにしない展開と作者のエネルギーに良い意味で裏切られ、まったく期待していなかったからか、なかなか楽しめた。独特の感性に刺激をもらえたから小谷田さんの他の作品も読んでみたい。




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