
『穢(けが)れなき者へ』マイクル・コリータ 越前敏弥/訳
新潮社[新潮文庫] 2025.09.03読了
新潮文庫の新刊は、一冊も買わない月はないと思うのだけれど、最近は翻訳もの新刊を買ってない気がする。通常の文庫新刊と発掘本も含めて。数ヶ月前に出ていた『私立探偵マニー・ムーン』が気になりつつ、、、ひとまず最新刊のこちらを読むことに。帯の裏面に、スティーヴン・キングらが激賞!とあって、これは手にとってしまうよな。訳も安定の越前敏弥さんだし。
7人の死体が乗ったクルーザーの第一発見者となったイズレルは、警察から殺害容疑をかけられる。イズレルは過去に父親を殺した罪で15年間服役しており、死体のうちの一人が当時の殺人に関わりがあった人物だったのだ。一方、父親に虐待される少年ライマンは、突然現れた若い少女を匿うことになる。アメリカ・メイン州の離島サルヴェーション・ポインド島が舞台となり、イズレルとライマルの話が交互に語られる。
私立探偵カルーソが帰ってからイズレルは気づく。
あの"こっちを見ろ"という声は、相手に周囲を見まわさせたくないときに危険が別の方向から迫っていること、何人かが襲いかかろうとしていることを気づかせたくないときにー発するものだ。(402頁)
「見ろ」という言葉にはその対象を見て欲しいというだけでなく、他を見せたくないときに使う場合もある。手品なんかでもよく使われる手だ。これって結構重要なことだよなー。もしかしたら、張り巡らされた監視カメラにあえて何かを見せて、その裏で何かが行われているなんて有りそう。ミステリー小説にできそうでは?
悪と善の対比や落差がものすごい。こんなに酷い悪人がいるのに一方では正直に生きる人がいる。何人もの人が死ぬのに、この作品の読後感はむしろ感動的で希望に満ちている。
私自身は翻訳ものを読みなれているが、この作品はずば抜けてすいすいと読めた。展開が気になるからというのももちろんあるのだが、翻訳もの独特の読みづらさが全くない。さすが越前さん。海外ミステリを読みたいけど翻訳ものに苦手意識を持っている人にはおすすめできる作品だ。