
ピアズリーの画が目を惹く。既に故人なのに、芥川龍之介選ってどういうことなのかと思ったら、芥川が旧制高校の生徒のために編んだ英語読本ということで過去に出版された『モダン・シリーズ』なる本があって、そのなかからいま読んでも楽しい作品を選び、新たに翻訳してまとめたものらしい。単行本は2018年に刊行されておりその文庫版がこれ。編者に柴田元幸さんの名前があるから手に取ったのだが、よくよく見ると名だたる翻訳者の名前がずらり。めちゃくちゃ豪華だ。
改めてエドガー・アラン・ポーの凄みに驚愕、興奮。『天邪鬼(あまのじゃく)』(エドガー・アラン・ポー 柴田元幸/訳)は、芥川の自伝となる『大導寺信輔の半生』を彷彿とさせると解説されている。そもそも自伝を読んだことがないから気になる。
流感と手相の話が妙に引っかかる『A・V・レイダー』(マックス・ビアボーム 若島正/訳)がなんとも不思議な話で印象に残った。あまり読んだことのないタイプの小説だ。自虐的であり、こういうのが「ブリティッシュ・ジョーク」なのか!?だとしたら「アメリカン・ジョーク」とは全然違うな。
最後は芥川自ら訳した作品と、本人の短編が1つ収められている。この『馬の脚』という作品は、想像している芥川作品とは少し異なる。馬って、少し人間に近いというか、愁いを持った眼をしているからなんか不気味だよなぁ。しかし、タイトルに「怪異」とあるわりに、全体的に怖さはほとんど感じなかった。
この文庫アンソロジーの一番良いところは、各作品の前にある編者の澤西祐典さんの簡単な説明書きだ。芥川がこれを選んだ理由、作品の時代背景や作者のエピソードなどが短い文章ながらわかりやすくまとめられている。読んでから本文に入るとすんなりと浸れてものすごく読書の助けとなった。