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『雨雲の集まるとき』ベッシー・ヘッド|太陽は博識であると自負している

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『雨雲の集まるとき』ベッシー・ヘッド 横山仁美/訳

雨雲出版 2025.06.23読了

 

気なくX(旧Twitter)を眺めていたら、韓国語翻訳家・斎藤真理子さんがこの本について発信していたのを見つけた。どうやら、横山仁美さんという方はこの本を訳すために出版社を立ち上げたという。横山さんは大学生の時ゼミでこの本に出逢ったそうだが、かれこれ20年来かけてようやく実現した。まさに出版社の名前は「雨雲出版」だ。この本のため、という情熱に心を揺さぶられた。この本はそれなりの書店に行っても置いていなく、大型書店もしくは直接出版社から購入するしかなさそう。

 

フリカ大陸のボツワナという国が作品の舞台である。ボツワナって聞いたことはあるが場所はどこだか知らなかった。南アフリカの北側にある小さなめの国だ。主人公マカヤは政治犯として2年間南アフリカに服役していたが亡命しボツワナに移住した。そこで出会ったギルバートと共に農業に従事することになる。この土地と人々に徐々に魅了されていく。ボツワナには人種差別が存在する。何よりも黒人が同じ黒人を差別すること、女性への蔑視がはびこっていることに胸が痛む。

 

カヤとギルバートの周りにいる女性たちを巡って、予想通り恋愛や結婚にまつわるあれやこれやが繰り広げられるのだが、ここにあるのは上辺だけのものではなくて深いところの愛情だ。言葉を交わさなくても分かり合える関係性。これは友情においても大事。豊かな自然と共に生きることで、人間の本質を問いただす物語である。

 

ルバートの思考の働きにマカヤは魅了されていた。ギルバートは博識であると自負しており「太陽もおそらくそうだろう」と著者は言う。太陽は多くのことを間違いなく知っており「膨大な知識があるからこそ太陽は陽気で明るく、人類への信頼と愛情に満ちている(113頁)」という表現に打ちのめされた。太陽をこのように擬人化することがまず珍しい。この作品は農作物を育てることを題材としているからこそ、自然の恵み、それも天からの贈り物である日差しを与える太陽に敬意を表している。そして、恵みの雨と言われる水をもたらす雲も忘れてはならない。

 

間はつまるところ孤独な生き物だが、真に幸せになるには人との関わり合いが大切なのだと思い知らされた。ストーリー自体はありふれたもので起伏があるわけではないが、心が晴れやかになる静謐で美しい作品だった。本のジャケットの色味もとても素敵だ。

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