以下の内容はhttps://honzaru.hatenablog.com/entry/2025/06/27/074326より取得しました。


『踊りつかれて』塩田武士|切り取られた一部だけを醸し出されるSNSの恐ろしさ

f:id:honzaru:20250614204711j:image

『踊りつかれて』塩田武士

文藝春秋 2025.06.16読了

 

章「宣戦布告」を読みながら、この調子がずっと続くのはちょっとキツイなぁと思っていた。これは、突如としてあるブログに現れた告発文だ。お笑い芸人天童ショージは、不倫の末バッシングを受け家族にも被害が及び自殺する。また、人気絶頂の歌手であった奥田美月は、口汚い言葉をテープレコーダーに撮られて発信させられたことでSNSで炎上しその後姿を消した。 

   

童ショージも奥田美月も、その場だけを切り取られてしまったもの。世間は2人の何を知っているのだろう。彼らを舞台から降ろさせた、SNS上で匿名で誹謗中傷をする奴らを、この「宣戦布告」で落とし入れた。83名の個人情報を洗い出しつるし上げる。それこそ汚い言葉で。

 

人情報を垂れ流され失職せざるを得なくなった人物の1人が、「宣戦布告」を買いた瀬尾政夫を訴える。逮捕された瀬尾が弁護士に指名したのが久代奏(くしろかなで)であり、彼女がこの物語の主人公だ。彼女はショージと繋がりがあった。

 

まれながらの芸人天童ショージと、類まれなる才能と美貌を兼ね備えた歌手奥田美月という2人のことを、瀬尾がどれほど情熱的に支えて崇め親愛の情を抱いていたか。奏が捜査を進めていくにつれて、見えていなかった過去や深い理由が浮き彫りになる。被害者だけでなく加害者にも。

 

が同じ事務所の先輩である青山と「何で弁護士になったのか」を話す場面が印象的だった。青山は「人間への興味」があるという。弁護士自らの物語ではなく、依頼人の物語こそ重要と考えている。弁護士という職業に疑問を抱いていた奏であったが、この刑事事件を通して奏が成長していく過程を描いた物語であるともいえる。世代が近いということもあり、作中に多く登場する昭和後期のエンタメが懐かしく感じられた。

 

成もストーリーも素晴らしく、読んでいる間のワクドキ感満載でとてもおもしろかったのに、何かが足りなくて惜しい気がした。素人のいち読者がこんなことを言うのはおこがましいけれど。なにかがひっかかる…。83人の情報を出した「宣戦布告」なのに、ここに載っているのは数人だけ、とかそういうことかなぁ。時期を見て再読したらわかるかしら。

 

代社会の闇を炙り出すという意味では、先日読んだ金原ひとみさんの『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』に近い。だからこの『踊りつかれて』も、今すぐにでも読まなくてはいけない作品だ。そしてこの小説は、第173回直木賞候補に選ばれた。受賞してもおかしくないんじゃないかなと思う。他の作品を読んでいないからなんともいえないけれど。

honzaru.hatenablog.com

honzaru.hatenablog.com




以上の内容はhttps://honzaru.hatenablog.com/entry/2025/06/27/074326より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14