
新潮社[新潮文庫] 2025.06.11読了
久しぶりに宮沢賢治さんの作品を読んだ。子どもの頃にはたくさん読んだ記憶はあるが、大人になってからちゃんと読んだことはあったろうか。15〜16年前に岩手に旅行をしたときに「宮沢賢治童話村」を訪れたが、そもそも地域全体がイーハトーブづくしだったなぁ。旅行先で『注文の多い料理店』みたいなレストランに入った気がする。
この本には14の短編が収められている。有名な作品もあれば初めて知った作品もある。『よだかの星』はこんな話だったっけ。タイトルだけで内容を忘れてしまってる作品ばかりだ。食物連鎖について書かれた作品だが、今でいうルッキズム問題みたいなものの象徴で、見た目が悪いものに対してエグいほどの直球でなかなかきっつい。表題作『銀河鉄道の夜』は、これに影響されて派生された作品が多くある。どうしても『銀河鉄道999』のアニメの画と音楽が脳内に流れてきてしまう。
小さい頃に好きだった『セロ弾きのゴーシュ』はやはり今読んでも好きな物語だ。あんなに下手だったセロ演奏が、わずか10日あまりで聴衆を魅了するほどになるとは。毎晩の家での練習はどうやっていたかって?結局技術を磨くよりも楽しむことのほうが大事なのだ。でも解説を読むとこれはハッピーエンドではない、孤独感がある、のような捉え方もあるようで、まだまだ深く読み込めていないなぁと痛感した。
ひらがなばかりで読みにくさは多少あるものの、どの作品も心を抉られる。なんだか寂しいような心細いようなもどかしい気持ちになった。擬人化された小動物や虫、そして生命をもたない物体にいたるまで、あらゆるものに命を吹き込む宮沢さんは、たとえ生きていないものだとしても相手の気持ちになることの大切さを説いているように思う。
児童文学、童話を侮ることなかれ。簡単な言葉、ストーリーでも重たいものがのしかかる。この新潮文庫の宮沢賢治新編シリーズは他にあと2冊あるようなので、折を見て読もう。これは去年のプレミアムカバーの本。ちょうど新潮文庫夏のフェアでキュンタのステンドグラスしおりがもらえる本の対象だったこともあって手に入れた。このしおり好きなんだよなぁ。そろそろ今年もこのフェアの時期かしら。