
『名探偵と海の悪魔』スチュアート・タートン 三角和代/訳
文藝春秋[文春文庫] 2025.05.13読了
この作者の本はずっと前から気になっていた。初めて刊行された『イヴリン嬢は七回殺される』は、多くの文学賞の候補になった著者のデビュー作である。本の装幀も厳かで豪華な感じだったけど、特殊設定ミステリーで読みにくいと言われていたからパスしていたのだ。2作目のこちらから読むことにした。
最初から物語が頭に入ってこない!!もしかして途中から読んでいるんじゃないかとか、シリーズもので続きなのかなと感じてしまうほど、読者が既に物語や登場人物の背景を知っている前提で進むから、焦りが生じてしまい、やっかいさにしばらく辟易してしまう。ようやく全貌が見えてきておもしろさがわかるようになるのは3分の1を過ぎた位からだ。
東インド貿易船がアムステルダムに向かう船路で、怪事件が頻発する。そもそも乗船するときから「この船は呪われている、乗客は破滅を迎える」と、血だらけの男が宣言していた。名探偵サミー・ピップスと、助手のアレントはこの呪われた船の謎を解くことができるのか。悪魔だと言われている「トム爺」とは一体何者なのか、そして刻印が意味するものとは―。
というのが作品の大枠のあらすじなのだが、探偵サミーは囚われの身のため、アレントと総督夫人のサラが捜査に踏み出す。サラの娘リアのなんと聡明で才能に溢れていること。もっと登場機会を増やして欲しかったなぁ。
海洋冒険怪奇小説と謳われてはいるが、冒険という雰囲気はあまりなく、そして怪奇というほどの怖さもなくてもはやエンタメ小説だ。いろいろなことが起こり過ぎて情報も過多のため、読み進めるだけで力尽きてしまい、あまり犯人や動機やらを考えずに読み進めた。
読んでいる間ずっと『パイーレツ・オブ・カリビアン』の世界観が広がっていた。しかしイギリス人は本当に怪奇ものや船が好きよなぁ。著者が謝辞のなかで「本がどんなものか決めるのはきみだと思っている」と語る。どんな読み方をしても、どんな主張をしても問題ないというスタンスは潔くてカッコいい。