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『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』金原ひとみ|「そんなのおかしくない?」が埋もれてしまう

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『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』金原ひとみ ★★

文藝春秋 2025.05.10読了

 

り手が入れ替わりながら、現代社会の闇を吐き出す。最初の章は文芸編集長・木戸悠介から始まるが、もう読み始めてすぐに「これはおもろいんじゃないか」と感じたし実際に今の日本文学では飛び抜けていると思う。小説が好きな人であればそもそもの文芸にまつわる設定というのが心をくすぐられるのだが、それ以上に圧倒的な文体と現代社会に向けた魂の叫びに心を抉られる。

 

場する全員に何かしら共感するところがあって、年齢も性別も境遇も立場も全く違うのにどうしてこうもわかりみが強いのかと感じるのは、おそらく自分がこの相手はこんな気持ちだと想像しているものに相当に合致してるからなんだろう。つまり金原さんが描く人物は、個性的なようでいて実はありふれている普通の人なのだということ。

 

にはそれぞれ語り手の名前が付けられている。入れ替わり語る人物が違っているとはいえ、その語りの中に登場人物がほぼ全員登場する。圧倒的な存在感を放つのは小説家の長岡友梨奈だ。

 

梨奈が編集者木戸のことを「担当していた期間は長かったけど、魂のやりとりをしたことは一度もないよ」と語る。魂のやりとりかぁ。私自身職場でそんなやり取りができるのはごくごく少数だし、実際に心から相手を信用して自分をさらけ出せる人って人生のなかで数人しかいないかもしれない。他人を平気で断罪する(例え最愛の娘であっても)友梨奈は、この作品の中で一番強烈であり目が離せない危うさがある。

 

き合いのあった10年以上前に木戸から搾取されたと訴える橋山美津が、彼を告発する文章で「そんなのおかしくない?」という気持ちが残ると話す。世の中には「そんなのおかしくない?」という感情がたくさんあって、それがそのまま埋もれてしまう、つまり「藪の中」なのだ。

 

もそうだし、実際に多くの人が一番共有できるのは友梨奈のパートナーの横山一哉だろう。要は一般的だと言われる感情を持ち、社会の枠からはみ出さずにいる人。「かと言って一人でどこにも所属せず生きていく気概はないし、企業に所属している安心感も欲しいし、友梨奈という伴侶も絶対に必要なのだ」(319頁)とあるように、こういう大多数の考えてあるからこそ、友梨奈のような過激で自由な、確固たる独自の思想を持っている人に惹かれるだろう。

 

代日本の小説家で最も熱い方のひとりではないだろうか。前作の『ナチュラルボーンチキン』がめちゃくちゃ良かったから自ずと期待せずにはいられなかった。そして期待通りというか、もはや期待を上回った。しかも文中に「ナチュラルボーンチキン」という単語が出てきて笑ったし。いや、繋がってるんだよなぁ、この話。深いところで。『ナチュラルボーンチキン』は控えめなところがあったけど、この『YABUNONAKA』はかなり炸裂してる。もう、登場人物みんなが。でも、それは私たち自身でもある。

 

ット用語やカタカナが多い小説はどうにも合わないことが多いのに、金原さんの手にかかると全然違うものになる。現代社会に憂いている人、これからの日本に不安しか感じないと思う多くの日本人に読んで欲しい。10年後には間違いなく、いや5年後に読んでも既に時代遅れ感が強くなっていると思うから、今すぐにでも読むべき作品だ。

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