
『庭』小山田浩子
新潮社[新潮文庫] 2025.04.16読了
昨年の12月に小山田さんの作品と衝撃的に出会い、もうかれこれ4冊目になる。この本には短い短編が15作収められている。タイトルに「庭」という単語が入る作品が2作ある。私は庭がある家に住んだことがない。だから、小さなころからお庭には馴染みがなかった。地面を使って遊ぶには外に出るしかなかった。それで不便だなとか文句があったためしはないが、これを読んで土に接する生活って良いものだなと感じた。
最初の『うらぎゅう』では、迷信というか独自の祈りみたいなものに根付いた地域独特の風習が描かれている。祖父や両親、そして主人公であるもうすぐ離婚する女性の心理の多くは文章に表されていないのに、痛いほどわかる心理。実家に帰るバスの中での老人たちの会話がいきいきとしていた。老人たちの会話といえば『名犬』で温泉に浸かりながら話す老女たちの会話もとても良かった。何気なく聞き入ってしまう様がよくわかる。
小山田さんは高齢者をとても大事にしていると感じた。高齢の身体を労わろうという気持ちだけではなくて、長く生きている人を純粋に尊敬したうえで慈しんでいると感じるのだ。作品全体を通して、虫や植物やら自然界の生物が細かに観察されているのだが、それと同時に家族や近所の人との些細な触れ合いが書かれている。
何度もブログで話してるが、本はおもしろいとかつまらないというだけではない(津村記久子さん談)よなぁ。私にとって小山田さんの作品は、心が落ち着くビタミン剤のようなものだ。自然を愛する小山田さんの奏でる文章から、安らぎと生きていくことの純粋な喜びを見出せるのかもしれない。現代作家の中でこういう読み心地が良い作家、堀江敏幸さん、滝口悠生さん、津村記久子さん、松家仁之さんと並ぶくらい好きだ。できれば小山田さんの長編を読んでみたいなぁ。