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『半生の絆』張愛玲|深く愛し合うその先にあるもの

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『半生の絆』張愛玲(ちょうあいれい) 濱田麻矢/訳 ★★

早川書房[ハヤカワepi文庫] 2025.03.31読了

 

々な国の本を読みたいと思っているので、中国人作家の本もたまに読む。郝景芳(ハオ・ジンファン)さんや余華(ユイ・ホア)さんの小説のようにおもしろい本はあっても、思い入れがある作家や作品に出逢ってはいない。まだ多くを読んでいないというのもあるが。しかしそんな中でもこの『半生の絆』は傑作だった。著者の張愛玲さんという方は、中国では魯迅と並び称されるほどの文豪らしいが今まで全く知らずにいたとは。

 

分が好きだと思う作品はほとんどが読んで数ページで気に入るものだ。冒頭から心奪われ、張愛玲さんの文体の虜になった。しっとりと潤いのある文体は訳者の濱田さんによるところも大きいのかもしれない。

 

家がある南京を出て上海の工場に勤めている沈世鈞(しん・せきん)は、友人叔恵(しゅくけい)と同じ部署で働く顧曼楨(こ・まんてい)に初めて会った時から人とは違うものを感じる。2人は相思相愛となりゆっくりじんわりと仲を育んでいく。

 

命のいたずらというか、度重なるボタンのかけ違いのせいで2人は引き裂かれてしまう。人の思い込みというのは人間の運命をこうも変えてしまうのかという歯がゆさに胸が痛む。迷いや疑いがあるときほど人はネガティブになってしまい、悪い方悪い方へと考えてしまいまう。それぞれの家庭事情、経済力、しがらみ、中国の時代故もあるのか、2人は運命に翻弄されていく。

 

とわざや故事成語らしきものがたくさん出てくる。日本ではあまり耳馴染みがないものが多い。中国ではこうした言い伝えが生き方の指針になっている気がする。 中国の作家独特の展開と言えようか、一鵬(いっぽう)の突然の恋の行方には面食らった。「あれまぁ、こうなるか!」と、本を読んでいて珍しく言葉が出たほどだ。また、中国独特の野暮ったさというか下品さみたいなものが所々に感じられる。こういう国民性みたいなものが小説から感じられるのは興味深い。

 

々の運命を歩んだ2人が再会する時に何を語るのかー。2人は結ばれないのか。いや、ある意味ではずっと深く愛し合い、だからこその決断するのだ。思いを寄せている者同士が必ずしも結びつけられるわけではないという不条理。読み終えてみると、曼楨の強靭な意志に深く感じ入り、女性はやはり強し!と思った。

 

海は一度ディズニーランド目的で行ったことがあるが、南京には行ったことがない。勝手な想像ではあるが南京はあまり良いイメージがない。けれどこの本を読んで興味を持ったのは俄然南京だ。中国はコロナの前に北京を旅行したが、正直なところ「また行きたいか」と問われたら肯定はしないかなという感じだったけど、これを読んで不思議と気になった。

 

村記久子さんいうところの「本はおもしろいからいい、つまらないから悪いということではない」のと同じで、旅行先も観光名所がたくさんあるから、人気があるからと言って良いとは限らないのかもしれない。どんな場所にも何かがある、自分だけに見えるものがあるかもしれない。

 

の本、文庫本なのに1,800円を超えている。確かに分厚めの本だけど、翻訳ものだとはいえ高騰してるよなと思う。だけどもこの作品は値段なんてどうでもいいと思えるほど素晴らしかった。本を読んでこんなにも夢中になれ、感動し、心地良い時を過ごせるなら、なんとまぁ安いものだ。今年の個人的選書ベスト10に入るだろうと早くも予感させる。

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