
『悪い時』ガブリエル・ガルシア・マルケス 寺尾隆吉/訳
光文社[光文社古典新訳文庫] 2025.02.24読了
去年新潮文庫から刊行された『百年の孤独』はめちゃくちゃ売れて話題になった(現在進行形か)。あの難解な小説がこんなにも売れているなんでちょっと信じがたいけれど、新潮社の宣伝戦略が上手かったのか。それでも読んだ人の好評な感想がないと今の時代はそうそう売れないし、やはり名作なんだろう。私は10年以上前に読んだのだけど難しくて良さがわからぬまま終わってしまった。つい先日『族長の秋』が新潮文庫から出てこれも好評なようだ(一応入手した)。いま、ラテンアメリカ文学が注目されている。
特にその『百年の孤独』ブームにあやかったわけでもないみたい(解説によるとたまたま同じタイミングだったそう)だが、マルケスが『百年の〜』の前年に刊行したのがこの『悪い時』である。確かに本文に「マコンド」という地名が登場している。マコンドというのは『百年の〜』の舞台となる架空の都市の名前だ。
この作品、読みにくくはないのだが、なんともストーリーを説明しにくい。街に誰かのいたずらなのかビラが貼られ、それを目にしたある男が殺人を犯す。不穏な空気がひしめく街の有り様にちょっと苦しくなった。
ページ数の割には登場人物が多く、かといってどの人物もそんなに重要ではないというか薄ぼんやりとした印象だ。 誰もが虚ろに生きている感じ。救いようのない暗澹とした空気が漂っている。ビラを貼った犯人は誰かと占い師に問うた時に「町全体であって誰でもない」という返答があったのが印象的だった。生きている人誰も彼もが半ば諦めの境地にいて、幸せになることすら諦めているような、これが「悪い時」なのだ、悪い時には全てが悪い方向に進むという悪循環そのものようなこの世界…。