
『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ 髙山祥子/訳
東京創元社[創元文芸文庫] 2025.02.01読了
あの図書館というのは、フランス・パリにある「アメリカ国会図書館」のことだ。パリにありながらも英語の書籍などを提供する図書館で1920年に開館し現在も存在する。国内海外問わず、死ぬまでに一度は行ってみたい図書館や書店があるが、この図書館もそのラインナップに入れた。
1939年、本と図書館が大好きなオディールは図書館司書になりたくて面接を受ける。館長はオディールの情熱に打たれて採用を決め、実際に働くことになる。職員や利用者たちとのあたたかな触れ合い、父親が連れてきたポールとの恋愛を中心にして物語は展開する。
しかし、戦争の影響がじわじわと忍びよる。ナチスの占領下となったパリでは多くの図書館が閉鎖される。なんとか開館できていたアメリカ国会図書館ではユダヤ人の利用が禁じられてしまう。オディール達は兵士に本を送るのと同時に、図書館会員だったユダヤ人にも本を届ける。
一方、現代パートである1987年のアメリカでは、リリーという10代の女の子が、隣に住む謎めいた女性と親しくなる。知的で雰囲気のある隣人は何者なのか―。2つの時代が交互に語られていく。
デューイ分類法というのを初めて知った。アメリカの図書館学者メルヴィル・デューイが1873年に創案した図書分類法で、0から9 までのアラビア数字のみを用いた十進分類法のこと。世界で最もよく使われている分類法で世界では20万以上の図書館で使用されているらしい。日本の公共図書館ではわずか1%でしか使われていなく、これじゃあ日本にいたら知る由がないなと思いながら。で、オーディルはこれをほぼ暗記していて、何かの単語が出てくるたびに分類番号を頭に思い浮かべるのがおもしろい。
兵士たちに本を送る場面で、士気を高めるために兵士にも本が必要だという。ある男性が「どうして本なんだ?ワインじゃないのか?」と皮肉を言うが「他者の立場から物事を見せるような不思議なことのできるものは、ほかにないからです。図書館は本によって、ちがった文化どうしをつなぎます」(197頁)と答えるオディール。やっぱり、本は絶対に必要。もちろん悲しみにくれたり病に瀕していたり余裕がないと本は読めないけれど、「それでも日々は続く」という言葉があるように、人が生きている限り生活は続くのだから。
図書館が舞台の作品だから、当然世界文学がたくさん登場する。読んだ本も多い。タイトルだけは知っている本もあれば、存在すら知らない本もある。気になる本はメモをした。
真に嫌な人物が1人も出てこない小説だ。いや、ヒトではなくて、戦争こそがみんなの敵として立ち塞がる。単行本のときから気になっていたから、結構早い段階で文庫化されて嬉しかった。『アウシュビッツの図書係』という本(これはノンフィクションだったかな?)も読みたいと思っている。
本について書かれたものだけれど、本質としては戦禍を生き抜く人間たちのことが書いてあるから(しかもホロスコート)アネッテ・ヘス著『レストラン「ドイツ亭」』を連想した。でも、本当の意味でこの小説から学ぶのは友情についてだと思う。人が生きていく上で大切なものを教えてくれる良書だ。