
『燃えつきた地図』安部公房
新潮社[新潮文庫] 2025.01.27読了
安部公房さんの本を読むのは『砂の女』『けものたちは故郷をめざす』に次いでおそらく3冊目である。今までの2作は自分にはそんなに合わなかったのか、読解力不足故か私にはあまり良さがわからなかった。しかしこの『燃えつきた地図』は結構気に入った。やはり彼は天才作家だ。
ある女性の夫が半年前に失踪した。彼を探し出して欲しいと興信所に依頼がくる。興信所に勤める「ぼく」がこの小説の主人公である。しかし依頼人からは手掛かりをほとんど聞くことが出来ず、物的証拠もレインコートとマッチだけ。おまけに女性の弟という怪しげな存在が常に付きまとう。
探偵小説の一種ではあるが、実際探しているのは自分自身の内面であるかのようだ。「ぼく」の世界が歪んで見えてどことなく幻想的。この世界はモノクロ映画のようで色味がないように思う。安部さんはこんなに読点だらけの文体だったろうか。読点だらけで「ぼく」の焦りがひしひしと伝わってくる。なんか時間がない、何かに追われている、みたいな切迫した心理が読んでいても絡みついてくるから、こっちも息をゆっくり吸えないみたいな状態になる。
今年は三島由紀夫生誕100年ということで、書店でフェアが催されているのをよく目にする。去年は安部公房生誕100年だったので新潮文庫で帯をかけてフェアをやっていた。去年この本を買っていたのに(まとまてある場所に置いてなかったからか)すっかり忘れかけていた。これからは少しずつでも安部作品を読もうと思う。中毒性があると言われる所以が少しわかりかけたのが嬉しい。