
『ポアロのクリスマス』アガサ・クリスティー 川副智子/訳
クリスティー作品のなかで超有名作品は読んだつもりなので、ちびちびと未読の作品を読んでいる。かなり久しぶりだった(なんと去年はクリスティー作品を読んだのは1冊だけ!)。こういう季節感のあるタイトルの作品は読む時期を考えてしまうというか、本当はぴったりの時期に読みたいのだけど(例えばこの本の場合は12月半ば位)、なかなかそううまくはいかない。本自体が売れるのも時期によるだろうなぁ。
登場人物がひと通りどんな境遇にいてどんな人なのかがはじめの数章で説明される。だいたいクリスティーの作品ではこのパターンが多い。だから登場人物紹介がとても役に立つ。ページをめくりつ戻りつしながら、頭の中にある程度叩き込むこの作業をしていると、クリスティー作品だなぁと妙に感慨深くなる。しかし毎回おんなじような導入なのに、読ませるのは本当にすごい。
で、季節感のことに戻るが、クリスマスに(正確にいえばクリスマスイブ)殺人事件が起こったというだけで、特段クリスマスらしさはほぼ皆無だ。まぁ、クリスマスのイベントをきっかけに家族らが豪邸に集うことになったというイギリスらしさはある。
資産家の老当主シメオン・リーが血みどろになり殺害された。それも密室で。集っていた彼らの息子、親族、そして使用人のなかに犯人はいるのだろうか。という、あまりにも王道のストーリーであるが、私にはポアロが筋道立てて推理を繰り広げるまで、犯人を全く予想できなかった。
ミステリーの王道を、これほどまでに王道に楽しませることができるのがクリスティーの安定感よ。いつも絶大なる信頼感を持って本の頁を開くことができるのだ。