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『テス』トマス・ハーディ|過去の過ちを赦せるか

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『テス』上下 トマス・ハーディ 井出弘之/訳

筑摩書房ちくま文庫] 2024.12.12読了

 

劇というものは否応なく襲いかかる。不幸があればその後には幸せが来るとか人生は良いときと悪い時がちゃんとある、なんてよく言われるけれど、全然平等じゃあない。悪人だって運よく生きる人も多いし善良な人ほど損をする。本当に無情なほどに。そんな人の世の無常さをつきつけられた作品だった。でも、きっとテスの最後は間違いなく幸せだった。この上ないほどに。

 

しい家庭に産まれた美貌の少女テスは、父親がある牧師から「貴族の血筋を持つ」と聞いたことから、金持ちの同族からの援助を得ようと奉公させられる。そこで出会ったアレックとの出逢いからテスの悲劇が始まった。

 

およそのあらすじは知っていたけれど、テスの終盤のあのシーンは、第三者の立場からの客観的な視点で語られている。テスの想いは直接文章には表されていない。ここにくるまでの彼女の心情は事細かに綴られていたのに。それがハーディの腕のなせる技なのかもしれない。下巻の半分くらいまではなんならちょっとだるく感じていたのだけれど、最後の章がすごく良かった。ここを読むために今までの道のりがあったんだなという気分になった。この展開の凄みと読了感は名作だなと思わせる。終わった後にしみじみと良さがわかる作品だ。

 

トーリー性もさることながら、風景描写が素晴らしい。特にテスやエンジェル・クレアが乳搾りのために過ごしたダービフィールドの農家での樹木、家畜、自然の壮大さ。

 

スはクレアの過去の過ちを赦したのに、クレアはどうしてテスの過ちをすぐさま赦すことができなかったのか?同じ女性としては男性のこの感情にどうしても納得いかないような。時代故もあろうし、クレアが敬虔なキリスト教徒だったことも大きい。

 

ーディの小説を読むのは初めてで、難しくて読みにくいのかと想像していたのに全然そんなことなかった。女性の心理の機微が細やかに書かれており、ジェイン・オースティンの作品を読んでいるかのように錯覚した。筆者が俯瞰する視点はさながら『戦争と平和』のようである。時おり挿入される挿画が当時のイギリスの読み物っぽくて、ディケンズの作品のようでもあった。『テス』と名付けられた絵画もあるそうで。

 

典的な香りと風格を備えた物語である。だから若干の古さは否めない。訳文自体多少古く感じるけれど、集英社ギャラリーの文学全集に収められたのは1980年とのことなので、まだ45年程しか経っていない。それでも古いと感じてしまうなんて、言語が変わりゆくスピードは速いのだなとつくづく感じる。

 

集英社ギャラリーの本は装幀が素敵で眺めている分には素晴らしいのだが、持ち歩くには少し難儀でこの文庫本を結構前から探していた。古書店には古びたものしかなくて諦めかけていたがひょんなところから手に入った。先日、筑摩書房本社にて2日間限定でオープンしていた「蔵前ちくま書店」で見つけたのだ。ブックカバーかわいい!そして昔のちくま文庫には栞が付いていたの知らなかった!

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