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『大使とその妻』水村美苗|美しい日本語、そして古き良き日本の文化

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『大使とその妻』上下 水村美苗 ★★

新潮社 2024.11.19読了

 

んて美しい物語だろう。最後の数頁は、雑音を抹消して(流れていただけのテレビを消したり深呼吸したりとか)静寂の中じっくりと。読み終えた今、この余韻を深く深く味わっており、彼らだけでなく私の方も幸せな気持ちになった。

 

井沢に友人と旅行に来ていた初老男性が行方不明になり、その後用水路で発見されたという事故のような事件のような不思議な出来事が少し前に報道されていた。私はかなり気になっていたのだが、特に続報はなく真相は闇に包まれている。夜の散歩中に足を踏み外してしまったという事故だったのだろうか。

 

メリカ生まれの日系人男性ケヴィンが日本語に訳してしたためるのは、軽井沢・追分の隣家に住む人のこと。人と関わり合うことが苦手なケヴィンは、追分の奥地の小さな小屋を購入しひとけのない生活を気に入っていたが、唯一とも言える隣地に、建て増しして住む人が現れた。その隣人が「大使とその妻」、篠田夫妻である。大使って外交官のことで合っているよね。ケヴィンは特に妻の貴子のことが気にかかる。彼女は一体何者なのだろうか。

 

董品好きの友人イーアンと同じく「トラストファンド・ベイビー」であるケヴィンは、仕事をしなくても食べていける。「トランスファンド・ベイビー」とは要するに遺産で生きていける人のことだ。なんて羨ましいこと!とはいえ、本当に職につかずにやっていく人はごくわずかではなかろうか。

 

中には日本の伝統芸能が登場する。芸術家になり得る才能のようなものを書いた下記の文章に目を見張った。

芸術というものには、人に、もう少し、もう少し、と高みを目指させる自律的な運動が内在しており、その運動が面白く感じられる人にしか門が開かれていない。そして、その運動を面白く感じられるには、コツコツとした努力をいとわない真面目さが要る。(下巻・171頁)

 

た、作中にふんだんに引用されるのが『源氏物語』である。和歌を始めとして源氏物語に登場する人物や建物やらがなまめかしい。実は今年に入ってから源氏物語を読もうと思い、先日角田光代さん訳の文庫本を入手している。また、何年も前から読もうと思って手が出ないでいる『失われた時を求めて』にも何度も言及されている。あの登場人物に似ている、なんて記述が数箇所あり、読んでいれば!と悔やまれる。

 

はり水村さんの文章は美しく気品がある。こういう日本語を読むことができるだけでも幸せに思う。大事にゆっくりと頁をめくった。日本語や日本の古き良き文化をなくなさいようにという気概が感じられる。この小説は水村さんが書いた日本語のまま読まれるのが一番だと思う。他の言語に訳されて多くの国の方に読まれるのはもちろん喜ばしいし、作品自体も素晴らしいのだが、この作品は日本語を知っている人に読んでもらいたいと切に願う。そう考えると、その国の言語のまま読んだ方がより素晴らしい作品は世界中にたくさんあるに違いない。

 

年は、20年ぶりくらいに軽井沢への旅行を友人と企画している。随分変わってしまったろうとは思うけれど、観光地化していない場所を訪れてしんみりとしたいものだ。

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