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『敵』筒井康隆|日常の飽くなきまでの細かい観察と妄想

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『敵』筒井康隆

新潮社[新潮文庫] 2024.11.07読了

 

75歳の独居老人渡辺儀助のとりとめもない独白が続く。住んでいる家がどうとか、預貯金やら、老臭やら、身の周りのものなど自身の想いがつらつらと、滑稽な語りで綴られる。長編小説というくくりになっているが、タイトルがついた7〜8頁程の掌編が束になっているようなイメージか。日常生活の飽くなきまでの細かい観察と妄想。いやはや、男性の頭の中を覗いているようだった。老人といえど子供じみたところもあってなんだか微笑ましい。

 

「昼寝」とタイトルがつけられた章では、午睡のことがかかれているが、確かに夜見る夢と違って昼寝で見る夢は軽い感じがするなぁ。とはいえ日中は働いているし、私が昼寝をすることは滅多にないのだけれど。休日に一日中家でのんびりすることがあって、いつのまにかソファでうつらうつらするのなんて、快楽の極みではなかろうか。寝ようとして眠るのではなく、自然に落ちるというのが良いのだろう。お金や食事に関しての章は勉強になった。

 

力読点を削いだ文体は、一見読みにくそうに思えるがこれが意外と良い。当て字を使っているから(例えば、秘史秘史と〈ひしひしと〉、志度路藻泥〈しどろもどろ〉など)ちょいちょい中断することもあるのだけれど、これが案外に読みやすく(この文体を読むとやはりさすがだな思う)て癖になる。

 

去に筒井康隆さんの作品は『パプリカ』や『家族八景』、そして短篇集『世界はゴ冗談』などを読んだが、自分にはそんなに合わなかった気がしていて積極的に読んでいなかったので久しぶりだった。これはなかなかおもしろかった。

 

ょうど読んでいるあいだに、東京国際映画賞で、この原作を元に映画化された長塚京三さん主演『敵』が「東京グランプリ」を受賞されたというニュースが飛び込んできた。なんかこういう符合は嬉しいというか、読書時間そのものをも忘れ難くさせる。この原作も多くの人に読まれるきっかけとなるだろう。

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