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『雪の花』吉村昭|医学の進歩と発展は昔の人たちが命懸けでおこなったから

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『雪の花』吉村昭

新潮社[新潮文庫] 2024.10.18読了

 

天然痘という病を初めて知ったのは、池田理代子作の漫画『ベルサイユのばら』を子供の時に読んだ時である。時の王ルイ16世だっただろうか、天然痘にかかり顔に吹き出物が表れた姿は画とはいえど印象深く、かかったら最後治らない恐ろしい病だと思った記憶がある。

 

1830〜40年頃、福井県の笠原良策という町医が、多くの人命を奪う天然痘から守るために、命をかけて戦い抜いた。吉村さんお得意の記録文学である。病を治す薬を作り出したというわけではない。種痘の苗を福井に持ち運ぶ経緯と、子供達にそれを植え付けて広めていくという困難がこの作品の読みどころである。

 

策は、蘭方を日本に広めたシーボルト主催の鳴滝塾にいた日野鼎哉(ていさい)という大家に師事し、新しい医学を学んだ。ちょうど3ヶ月ほど前に吉村昭さんの『ふぉん・しいほるとの娘』を読んでいたから、この辺りの予備知識がありスムーズに作品に入れた。

 

学の進歩により発見が早ければたいていの病は治るし、例え治らなくてもそれなりの生活をしていけるよう患者にも家族にも配慮される。新型コロナウイルスだってワクチンや薬が次々と出てきて、もはや共存できる位の耐性になった。

 

学の進歩と発展は昔の医師たちがいたからだと改めて感じ入る。何度も何度も実験を繰り返し、批判を浴びながらも立ち向かう様は、有吉佐和子さん著『華岡青洲の妻』を思い出した。やはりなにごとも、誰よりも最初にやることが素晴らしいのだ。どんなに批判を浴びようとも、どれだけ失敗しようとも、根気よく粘り強く信念をもって。

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の作品は『めっちゃ医者伝』という短編を改題したものらしい。「めっちゃ」というのは、現在日常でよく使う意味(かなり、すごい、など)ではない。福井の方言で「あばた」のことを「めっちゃ」というそうだ。元のタイトルのままだったら、一見お笑いというか喜劇めいた印象になるから改題したことは功を奏している。

 

回読んだ吉村昭さんの作品は先程も述べた『ふぉん・しいふぉると〜』でかなりのページ数もある大作だったから、今回はさらりと読めそうな薄い本を選んだ。薄くてもなんのその、吉村さんの骨太の物語は人々の心を強く打つ。

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