
『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋
新潮社 2024.08.18読了
先日第171回芥川賞を受賞した作品である。朝比奈秋さんの名前は何度か目にしており『植物少女』という小説家が何かのテレビ番組で紹介されているのを見てとても気になっていた。
結合双生児として産まれた瞬(しゅん)と杏(あん)は、身体は一つだが一人ではない。結合双生児というと、作中にも出てくる下半身がつながったベトナムのベトちゃんドクちゃん、頭部がつながったカナダのタチアナ、クリスタ姉妹がいる。テレビ等でも一度は目にしたことがあるだろう。人体の、生命の不思議として強烈に印象に残るが、それは見た目のインパクトからだ。この作品に登場する瞬と杏は、見た目には左右で違いがあるという位の障がい者のような風貌だ。文章からひたひたと立ち昇る2つ(2人)の想いをどちらの思考なのか、自分がもしこうだったら、と考えながら読んだ。
自分が自分であり、一方で他人でもある。身体がひとつだから、もう一人が考えていることもわかる。これってどんな気持ちなんだろう。心と身体が一致しないようなことってたまにあるけれど、心と心、身体と身体が二つづつあるから、一致しないことが普通でむしろ多重人格のようなものか。いやでもこの場合は同じ瞬間に人格が同時にあるから違うのか。いやはや、一筋縄ではいかない作品に芥川賞らしさを感じた。
医師である朝比奈さんだからこそ書けた作品な気がする。医師とはどの分野が専門なのだろうか。彼が授賞式でスピーチしている姿を見て、繊細だけれども凛々しく、そして中性的な印象を受けた。作品を読んで、同じく文章も中性的だと感じた。思考小説、哲学小説とも言える。
この作品と同時に芥川賞を受賞したのは松永K三蔵さんの『バリ山行』である。こちらも手に入れたので近いうちに。