
『おしゃべりな銀座』銀座百点編
文藝春秋[文春文庫] 2024.06.26読了
書店に売っているわけではなく銀座の店舗に置いてある小冊子が「銀座百点」である。1955年に創刊された日本初のタウン誌らしい。今は街の至るところにこうした冊子が置いてあるけれど、これが始まりだったとは。どこだったか覚えていないが、銀座のどこかのお店(もしかすると空也最中かな?)で昔見た冊子がこれだったのかも。不思議な大きさの雑誌で、銀座のことが書かれていたのは覚えている。
小さい頃は父親の転勤のため国内を転々としたが、小学校高学年からは神奈川県に住んだ。東京は隣だからもちろん都内に遊びに行くことも多かったが、若い時は新宿、渋谷、表参道辺りによく行きそれが楽しかった。それがいつの頃からか、銀座や日本橋のほうを好むようになって、今では何故か落ち着く街となっている。きっと歳を重ねたということなんだろう。
その小冊子「銀座百点」に掲載されたエッセイのうち、47作品がこの本に収められている。半数位は読んだことのある作家さん、3割位は名前を目にしたことがある方、残りは初めてお目見えする名前だった。文筆業に携わる方がほとんどだが、画家や建築家、役者など、いわゆる文化人の名が連なる。銀座というひとつの街に対する考えや思い出など、おしゃべりを聞いているかのように気楽に読むことができた。
行きたくなったのが、松屋デパートの裏にある和花専門店「野の花司」だ。これはいしいしんじさんのエッセイに出てきた。何人ものエッセイで登場する「伊東屋」「資生堂パーラー」「銀座木村屋」「教文堂」「マリアージュ・フレール」は、銀座といえばの店名だ。老舗洋食レストラン「煉瓦亭」や「キャンドル」も気になった。まぁ、私は庶民派「イタリー亭」が大好きだけれど。
ほとんどの人が銀座に憧れを持ち、銀座を歩いているだけで良い気分になったり、亡き母を思い出す地になっている。しかし、なかには銀座で過ごした5年間が過酷だったという人もいた。銀座自体が嫌だったわけではなく、たまたまその方の人生の5年間が試練の時だった。それを乗り越えたからこそ今の自分があるわけで、そういう意味では銀座の地に感謝をしているらしい。色々な人たちの「銀座」がここにはある。
どうしてだろうか?書いている人は全て違うのに、なんとなく文体が似ていて、同じ人が書いてると言われても気づかないかもしれない。編集者が大幅に手を加えていることもないだろうに、何故だろう?これも銀座という街の魔力なのだろうか。金井美恵子さんはもちろん独特の文体でちょっと目立っていた。田中慎弥さんは内容からして彼が書いたものだとわかった。