
『死刑執行のノート』ダニヤ・クカフカ 鈴木美朋/訳
こういった海外の名前を知らない作家の本は、すぐに読まないと積読まっしぐらになるよなぁ。エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)を受賞したこの小説の著者はダニヤ・クカフカ。クカフカって言いづらい!フカフカ、もしくはプカプカになってしまう笑。
少女殺しの罪で死刑囚となり、死刑執行まであと12時間というところで目を覚ますアンセル・パッカー。彼は獄中の数年間で「セオリー」と呼ぶエッセイを書き溜め、ある計画を企てていた。残りの12時間でその計画を実行できるのかが回想とともにアンセルの視点で綴られるのかと思ったら違った。彼と関わった3人の女性パートがメインとなり、アンセルの孤独、人生のままならなさを浮き彫りにしていく。
女性パートというのは、アンセルの母親ラヴェンダー、アンセルの妻の双子の妹ヘイゼル、そしてニューヨーク州警察の捜査官サフィ・シンである。どの人物も生き方な想いが痛ましく、読んでいて結構苦しくなる。アンセルがあんな風になってしまったのも、あの生い立ちがあってこそ。人間、犯罪者になるのはほんのささいなきっかけだろうし、誰にでもそうなり得るのだということを改めて感じ入る。
なかでも小さい頃からアンセルを知っていた(しかも恋焦がれた時期もあった)サフィの語りが一番重苦しく、自己嫌悪と後悔に苛まれる。彼女の未来が光刺すものであることを切に祈る。時間の経過とともに挟まれるアンセルのパートは二人称で書かれており、独特の書き方だった。これが全体を引き締めている感じ。
エドガー賞受賞作から想像していた小説とは違って、心理的文学作品のように感じた。あまりないタイプの作品であり、期待していなかったこともあってかとてもおもしろく読めた。被害者を含めた女性に重きをおいたフェミニズム作品でもあり、著者の眼差しに優しさを感じる。