
『ザ・ロード アメリカ放浪記』ジャック・ロンドン 川本三郎/訳
ジャック・ロンドンが作家として成功したのは「若いころあちこち放浪していた時代に経験したこの訓練のおかげではないか」と自身で感じている。その訓練とは、生きるための食べものを手に入れるために、本当らしく聞こえるホラ話をしなくてはならなかったこと。これが物語る力を養ったのだという。
今の時代で、特に日本でこういった放浪をするのは困難だろう。世界のどこかでは今でもこんな暮らしをしている若者がいるのだろうか。アメリカでは列車にただ乗りしながら放浪する人間たちのことを「ホーボー」と呼び、自由な放浪者として文化英雄の要素が強いという。彼らには何者にも束縛されない自由があった。
放浪罪という罪が存在し、禁錮30日を例外なく言い渡されることに驚いた。しかもその人数がまたすごい。そして、刑務所でも社会と同じような縮図でものごとが成り立っていることに「そうなるんだな」と妙に納得した。
貨物列車にうまく乗り込んでも車掌に叩き出される。それを3度繰り返したら普通ならやめるだろうに。ロンドンが考えた作戦というのは「その男のことを忘れてしまう」こと。自分の理性の回路を切り、またもや乗り込んだのだ(4回め!)。なんたるしつこさ、図々しさ!こうでもしないと一流のホーボーになれんよな。
かなり過酷な生活を強いられて精神崩壊ぎりぎりになろうかというのに、ロンドンはむしろ楽しんでいるかのよう。解説を読むまで知らなかったが、ロンドンは結婚していても放浪・冒険をやめなかったそうで、身体に染みついた根っからの放浪癖があったのだ。
文庫本の最後の頁にこんなおもしろい文章が!本書の注釈を単行本時に執筆された秦玄一氏を探しているという。連絡先を知っていたら編集部までご一報をと。このネット社会に、本の最後にちょこっと載せてしまうちくまさんの心意気がなんともイイ!
