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『奈落のマイホーム』

 妻と息子とともに、ようやく新しいアパートに入居できた男。しかし自動車をなかなかどかさない別の入居者のため、引っ越し荷物をなかなか運べなかった。しかも用事でいろいろな場所に行くたびに、その入居者がちがう職業についていて、男から仕事をもらおうとしてくる。
 そんなお金をほしがっている別の入居者に困っていた男だが、息子が気になることを指摘した。部屋にビー玉を置くと勝手に転がっていくというのだ。そして建物あちこちにできたヒビや、なぜか割れている入り口のガラスなどが気になっていく男だが……


 陥没事故を題材にした2021年の韓国映画。『光州5・18』*1等、これまで歴史や災害をあつかったディザスター大作を手がけてきたキム・ジフン監督がひさびさに発表した作品。

 これまでの監督作品どおり韓国映画としては大作といっていい規模のVFXやセットをつかっているが、今回は数階建ての小さなアパートひとつがシンクホールに飲みこまれるというスケールの小ささ。そのおかげで、企画に要求されるより少し多めのリソースをつかって映像の満足感を高めるという、世界的に高評価されてきた韓国映画の潮流に乗れている。
 アパートのスケールが小さいおかげで、移動しながら生存の道をさぐる描写に無駄がない。さすがに入らない部屋も複数あるが、屋上から落下したり壁づたいに登ろうとしたり、さらに1階の駐車場部分でも重要なドラマが展開され、舞台の上から下まで使いきっている。歴史的なディザスター映画『タワーリング・インフェルノ』が世界最高峰という舞台をつかいきれていないと感じたことと好対照*2
『タワーリング・インフェルノ』 - 法華狼の日記

百階以上あるのにあまりじっくり移動を描いたりもしないんですよね。ワンシークエンスで階段をのぼりおりしたのってせいぜい四回くらいでしょう。エレベーターも途中で止まったりするので実は上から一番下までカメラが追いかけるような描写が存在しない。
たぶん三十階建てくらいでも同じ描写の映画ができそう。

 登場人物も少なく整理されて、見ていて混乱するところがない。災害に巻きこまれて直面するのがほとんどアパート内の住民であるため、見映えを優先して専門家が無駄に危険を増やすようなツッコミどころも少ない。監督による以前の事故映画『ザ・タワー 超高層ビル大火災』は俳優の顔を見せるため火災のなかで防護マスクやヘルメットを外す描写に違和感しかなかった。一方こちらの映画は最後に無茶苦茶な生存方法をつかうが、逆に素人だから選べた賭けとして納得感がある。無駄に危険をおかす子供の愚かな行動も、けっこう周囲の人間が素人なりに必死で行動するので、状況が動きつづけてストレスが無駄にたまらない。
 スケールの小さな舞台で巻きこまれた人々が協力する展開で、社会の縮図を描いた風刺劇のようにも見えてくる。人命がおびやかされているのにコメディタッチな演出が多いところも、もともとブラックユーモアな雰囲気があるので全体になじんで、シリアスへの転調も無理がない。
 いくら電波もなかなかとどかない井戸の底のように描写するとしても、さすがに500mは沈みすぎで、せいぜい100mくらいにするべきだろうとは思った。しかしこれもコメディタッチな演出のおかげで雰囲気が壊れない。バカバカしさすらある長々とした落下を、韓国映画なりに力をこめたVFXと、俳優をふりまわす巨大セットで、遊園地の絶叫マシンのような恐怖を体験できた。
 また、公開当時の感想では疑問視されていたらしい、救出部隊が手をこまねいてなかなか動けない展開は、2025年に日本の都市部で発生した陥没事故の後で観賞すると嫌な説得力があった。現実の事故では調査だけでも困難で時間がかかり、とりのこされた車両運転手を救出できなかった*3。映画では、生存者がほとんど自力で浮上したとはいえ、数日で救出できただけでも大成功だとわかる。もちろんこれは現実の救出活動を批判しているわけではなく、物語の都合と思われた映画の描写が実際は現実的だったということだが。




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