春秋戦国時代の中国大陸で、若き秦王が刺客におそわれたところを信が助けた。そして隣国の魏からせまりくる軍勢に対抗するため、信は一兵卒のような立場で最前線におもむく。見渡す限りの平原における戦争がはじまる……
原泰久の少年漫画を実写化した2022年の日本映画。2019年公開の1作目*1と同じく、佐藤信介監督が日本映画としては破格のスケールで戦場を描く。
日中それぞれで撮影する企画だったこともあり、新型コロナ過のため制作が停滞したらしいが、VFXを活用して素材を組みあわせ、完成した作品に粗らしい粗はない。
シネマスコープで左右に広がる草原を舞台に、多数のエキストラに3DCGで作られた兵や馬を追加した集団がぶつかりあう。単調さを感じるほど何もない平野の広さは日本映画では珍しいし、前線の小さな見張り台や主人公が即席で作った陣地などで適度に変化をつけている。特撮映画としては、馬がひく古代戦車が兵士を轢殺する描写の自然さに感心した。
さすがに遠景はゲームのような印象のカットも散見されたが、外国の大作映画でも時々あるレベルで目をつぶれる。
俳優の見せ場を優先せず、ほとんど戦場を舞台にした構成も珍しい。冒頭の暗殺劇から少しの状況説明をはさんで、尺の大半が戦争の準備から戦闘に費やされる。
ここで最初から最後まで好戦的で現代日本的な価値観から外れた戦場が大作映画で描かれたところが興味深い。能天気な愛国ハリウッド映画でも、もう少し厭戦的な湿っぽい描写がアクセントで入りそうなものだ。
敵の知将が秦に虐げられた少数民族の出身で、自軍の将が凶悪な容貌の印象どおり部下の犠牲を気にしない対比も独特。主人公の心情とは独立して敵将に同情したくなるところ、自軍の将が戦場の流れを乗りきって暴力で粉砕するように勝利してしまう。
どう考えても意図的だろう価値観の断絶が、隔絶した時代の出来事という印象を生みだしていた。なお、観客視点で配置されている主人公が自軍の将の勝利にわだかまりを感じていないので、戦争の帰趨は正邪と関係なく決まるという構造ではない。むしろ水滸伝のような中国古典らしい現代倫理を超越した英雄観に近い。