「ヨット大冒険」は、母が捨てようとしていたダンボール箱をもらって、のび太とドラえもんが庭でヨットに見立てて遊ぶ。しかしその遊びをジャイアンとスネ夫に笑われてしまい……
長らく単行本未収録だった初期作品を2005年リニューアル以降で初アニメ化。伊藤公志脚本、三宅綱太郎コンテ、池野華乃演出、堀江佑作画監督で映像は安定。
ごっこ遊びの楽しさを極限までつきつめた物語を順当に映像化。庭で段ボールに乗って海を幻視するカットを、ゲームのTPSのような構図でとらえた場面など、コンテ段階のカメラワークは全体的に工夫されていた。
しかしデジタル撮影技術が発達した現在において、喫水線の表現をセル画*1の波が船の周囲にとりまくだけなのは、絵としての面白味が弱かった。原作は背景も同じような実線で描かれているから、個体がそのビジュアルのまま液体としてふるまう異化効果が生まれていた。アニメで同じ効果を目指すなら、たとえば喫水線にふれている部分の背景美術をデジタル技術で波打たせれば面白くなるかもしれない。
また、アニメオリジナルの出木杉たちとのボート競争は楽しいが、三つしか船がないのに一チームがスタート直後に脱落して、ガチ勢すぎる出木杉との対決が長すぎるのと、それなのに風に助けられてのび太たちがギリギリ勝ってしまう偶然だよりは面白味が薄い。もっと多様な船と切磋琢磨してほしかったし、ヨットは風にたよるという以上の理屈ものび太たちの勝利につけてほしい。たとえばオールで漕いで速度を増す作戦をスタート時点からおこなっておくとか。対する出木杉はひとりで戦っているため帆の操作に専念する必要があり、同じ作戦がつかえないことに説得力があるはず。
「恐怖のたたりチンキ」は2019年の再放送。当時の感想でも書いたが、リサイクルセンターのリアルさは、背景や小道具を様式で記号化するこの作品には珍しい。
『ドラえもん』恐怖のたたりチンキ/レプリコッコ花火 - 法華狼の日記
*1:厳密には現在はセル画ではないが……「アニメ塗り」と表現すべきだろうか?