原作は山本周五郎の「赤ひげ診療譚」
日本、黒澤明監督、185分
江戸時代後期の小石川養生所、3年間、長崎で医学を学んだ青年保本登は、医師見習いとして小石川養生所に住み込む。
しかしそこは治療費を払えない貧乏人の集まる養生所で、ひげをはやし通称「赤ひげ」といわれる無骨な所長の新出去定が取り仕切っていた。

登は全く不服で、酒を飲み、御仕着も着ず、出世を閉ざされた怒りをぶちまけて破門されることを望んでいた。
登はふとしたことから何人も男を殺した狂女の美しさに惑わされ、危うく命を落としそうになるところを赤ひげに助けられる。
自分のことは決して語らない無口な末期ガンの老人六助の最期。
長屋で死んだ車大工の佐八とおなかの悲しい恋の物語を佐八の死の床で聴いて胸に迫るものを感じていた。

そして赤ひげは岡場所で用心棒を撃退して12歳のおとよ、を救い出した。赤ひげは、この娘は身も心も病んでいるからお前の最初の患者として癒してみろ、と彼女を登に預ける。
やがて心を開いてゆくおとよの演技の素晴らしさ。わざとモノクロで撮影して、影を強調している。
「あらゆる病気に対して治療法などない。貧困と無知さえ何とかできれば病気の大半は起こらずに済むんだ。病気の陰には、いつも人間の恐ろしい不幸が隠れている」
雪、雨、強風、と自然現象がうまく取り入れられており、特に雪のシーンは秀逸だ。黒澤のヒューマニズムが存分に味わえる作品だった。185分という長尺だが、エピソードがたくさんあり充分に堪能できる。貧困と医療を人間ドラマに落とし込んだ傑作。