以下の内容はhttps://hirosaji.hatenablog.com/entry/2022/10/28/043609より取得しました。


【メタサーベイ】イラストの心理戦略をこれからサーベイする人のために

先日、イラストの心理戦略を紐解くアプローチをPyCon JP 2022にて発表しました。

イラストは、さまざまな分野の知識体系や経験則が凝縮してできた文化で、その多くを把握するのはとても大変です。
しかしイラストを観る人でも描く人でも、イラストに込められた知識や経験を知っているほうが、よりイラストを楽しむことができます。

そこで今回はイラストの心理戦略にスポットを当て、重要な知識や経験を改めて体系化しました。

そのために取り組んだのがイラストの心理戦略の"メタサーベイ"です。
これからイラストを"サーベイ"する人の足がかりとなる記事を目指しました。

諸注意

  1. 科学 < 経験則がベース(私の知識はイラストの技法書がベースなので、たぶん厳密性に少し欠けます。疑って読むくらいがちょうど良いです!)
  2. エンジニア用語がチョットあります(エンジニア向けに書き始めた記事なので、エンジニア用語を少し解説に挟んでます。わからなかったら読み飛ばしてOK!)

用語説明

サーベイとは

サーベイとは調査を意味する言葉で、特に”物事の全体像や実態を把握するための調査"のことを指します。

これに関連するのが「リサーチ」で、これも調査を意味する言葉です。
リサーチは、"目的や対象が明確で、より細かな事実を把握するための調査"を指します。
それに対してサーベイは、"目的や対象をはっきりさせるための調査"という位置付けです。

そして、このサーベイに「メタ(高次の)」という語句を付け加えたのが「メタサーベイ」です。

メタサーベイとは

メタサーベイという言葉にはまだ明確な定義はありませんが、関連して有名な言葉に「メタ認知」があります。

メタ認知とは、"自分の認知活動(思考や行動)そのものを客観的にとらえて整理すること"。つまり、自らの認知を認知することを指します。
するとメタサーベイは、"自分のサーベイそのものを客観的にとらえて整理すること"。つまり、自らの調査を調査することだ、と言えるでしょうか。

特に最近の学術界隈では、後続のためのサーベイ支援という意味合いが強いようです。
次に続く人が参入しやすい形に要点を整理して、学習リソースを紹介するところまでがメタサーベイの一連の流れとされています。
(日本では cvpaper.challenge の活動がその代表例ですね)

私もこの学術界隈の慣習にならって、メタサーベイをしてみました。

「イラストの心理戦略」のメタサーベイ

PyCon JP 2022での私の発表でも、イラストの心理戦略を体系化して解説しました。

発表では、イラストを構成要素に分解し、中でも心理に作用しやすい色/光/キャラクターの3要素について解説しました。
しかし一般的なサーベイにあたって、この3要素を使うことは必ずしも重要ではありません。
なぜなら発表の例はあくまでも、プログラムでの検出を前提として、調査対象を限定したアプローチだったからです。

そこでこの記事では、改めてより汎用的にサーベイしやすい分類を策定しました。

  • イラストに描くモノのことを考え、モノの構造を知る
  • イラストを観る人のことを考え、ヒトの心理を知る
  • イラストを評価する社会のことを考え、社会の仕組みを知る

この3つに対して、学問領域などのトピックを分類したのが上図です。
続いて、この3つの背景や動向、学習リソースをそれぞれ紹介します。

「モノの構造」を知る

『え、モノの構造を知ることが、心理戦略につながるの?』という疑問を抱く人もいるかもしれませんが、非常に重要です。

なぜなら人間は、知っているけど何かがおかしい、つまり歪んだ既知のモノを嫌うからです。

人間の視覚は、中心窩(視野の中心2度の領域)を除く周辺視野の情報の多くを推測で補完しています。
歪んだ既知のモノは、周辺視野での推測の精度が悪く、あまり推測の精度が悪いとヒトは「異常なモノが目の前にある」と強く認識してしまいます。
(それが未知のモノであれば、新しく覚えることで推測の精度が上がる)

これを、ヒトの情報処理システムを例に説明してみます。

感覚器官を使ったヒトの情報処理システムの構造は、多階層のマイクロサービスです。

感覚→知覚→認知...というフローの処理を逐次実行しながら、注意/選択/抑制/制御という割り込み処理を管理する、という情報処理を私たちは日夜こなしています。
(脳の機能をモジュールと見なすアプローチは全脳アーキテクチャより)

では低品質な、雑に言うと下手なイラストを見たとき、ヒトの情報処理はどうなるでしょう。

例えば、物体認識や異常検知の関数でエラーやアラートが鳴ります。
これによって、注意/選択/抑制/制御の割り込み処理が発生します。

ヒトの情報処理は逐次実行されているため、エラーやアラートが鳴り続け、割り込み処理が発生し続ける状態になります。
やがてヒトはアラート疲れを感じ、そのイラストへの関心を失ってしまいます。

この説明は超ざっくり版なので、もしヒトの情報処理システムをより厳密に知りたい方は、各自調べてみてください。
個人的には、次の解説論文がおすすめです。

以上、イラストの戦略のために、なぜモノの構造を知る必要があるのかをまとめました。
結局何が言いたかったかというと、モノを"正しく"描くことは、ヒトの心を動かす上での大前提であるということです。

ただ、写実的に描くことが"正しく"描くこと、というわけではありません。
モノを特徴づける特徴を、より特徴づけるカタチに描くことで、ヒトは"正しさ"を感じやすくなります。

以下では、それらの学びに役立つ重要な歴史やおすすめの書籍、フォローを推薦する方々をまとめました。

「ヒトの心理」を知る

ヒトの心理を知ることも、もちろんイラストの心理戦略に役立ちます。
これに関しては言うまでもないですね。

特に目の前のモノからどんな特徴を抽出し、どのように処理するか、といったヒトの認知プロセスに関しては既に多くの知見があります。
(「モノの構造」を知る、の説明でも少し触れました)

知見が多い分、基礎も幅広いので、ここではとても解説しきれません。
いくつかの大学が知見をまとめた資料を公開しているので、しっかり勉強したい方はまずそれらを調べてみるといいと思います。

また最近は、進化心理学という領域が一部で注目を集めています。
既存の前提(社会学や生物学など)を覆すアプローチがいくつも提唱されていて、しばらくはHotなトピックとなることでしょう。

以下、おすすめの書籍やフォローを推薦する方々をまとめました。

「社会の仕組み」を知る

社会の仕組みを知ることも、イラストの心理戦略に役立ちます。
特にイラストレーターが、自身の創作活動を長期的に続けるために必要です。

イラストレーターは自身の特性を鑑みて、日頃どう振る舞うべきかを常に考えています。
リスクを予測しつつ、自身とファンの満足度を最大化させることが、イラストレーターの本懐です。
(ただし、企業に所属するイラストレーターは少し振る舞いが異なる)

そのためには、ファンの心理や世間の情勢を観測し続けることが大事です。

そして、特に有効なのが、イラストレーター自身が目指したいロールモデルとなるプロ絵師を見つけること。
エンジニアが自分のプロダクトに合ったベストプラクティスを参考にするように、イラストレーターも自分の創作活動に合ったロールモデルを参考にするのが近道です。

ちなみに、私が理想とするロールモデルGUWEIZ 氏。
彼の自己学習(独学ではない)の精神や、ファンとの対等な関係性は、私にとってトレースしたいと思うほどの理想形でした。
(詳しくは The Art of GUWEIZ グウェイズ画集 で語られてます)

さらに、ロールモデルの振る舞い一つ一つの効果を分析/予測できるようになるのがベターです。
以下、おすすめの書籍とフォローを推薦する方々をまとめました。

その他

プロのイラストレーターの中にも、自身の思考を可視化して伝える取り組みをされている方が何人かいます。
中でも、次の4名はフォロー超オススメの方々です。

この4名も含め、イラストを理解するために必要な暗黙の知識やニュースを発信している方を(知っている限りまとめて)次のリストに追加しました。
良ければフォローをどうぞ。

イラストを学問とする講座を持たれている方をフォローするのもオススメですね。京都芸大(KUA)やColosoの講師陣とか。

もし他にもオススメな方がいたら、この投稿へのコメントなりTwitterなりで教えてもらえると、とてもとても嬉しいです。とてもとても。

終わりに

この記事では、「イラストの心理戦略」のメタサーベイに挑戦しました。

メタサーベイでは、心理戦略をサーベイする枠組みを改めて再定義し、基本方針や学習リソースを紹介しました。
心理に関連する研究は歴史が長く、日本語でまとまった資料も多いので、カバーすべき量は多いもののサーベイに困ることはないかと思います。

ただ、ちょっと反省として、カバーする範囲を広くしすぎて基礎的な内容までしか踏み込めなかったことが悔やまれます...。
今回が私にとって初めてのメタサーベイだったので、この学びは次回に活かしたいですね。

今後も、イラストをもっと楽しむための情報発信(ニュースや暗黙の知識など)をしていくので、興味ある方はTwitterをフォローしてみてください。 twitter.com




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