過去に描画したグラフを延長するシリーズの3回目ということで、今日は人口とGDP - himaginary’s diaryで描いたグラフを延長してみる。

期間を直近まで延ばしたほか、名目GDPを景気対策と戦争との違い - himaginary’s diaryで用いたデータで1930年まで、総人口をこちらのデータで1920年まで遡及している。また、日本人人口も加えている。
前回のエントリでは「総人口の伸び率低下と概ね軌を一にして名目GDPの伸び率が低下している。就業人口の伸び率も同様であるが、そちらは年ごとの変動が激しく、総人口の伸び率ほど関係が明確ではない。なお、右軸の名目経済成長率の軸目盛りは、左軸の人口成長率の軸目盛りの10倍に設定したが、そのことから、名目経済成長率は総人口成長率のおよそ1/10の水準にあることが分かる。」と書いたが、そうした傾向は概ね変わらない。ただし、2020年以降は、それまで大きな差が無かった日本人人口と総人口の伸びに差が見られるようになり、日本人人口の伸びがマイナス幅を拡大させる一方、総人口の伸びは下げ止まって横ばいで推移している。それと軌を一にするように、名目GDPの伸びが回復している。
次いで、名目GDPと総人口の散布図。

係数はやはり10程度となっている。また、近年の人口減少を反映して、右端の折れ曲がった感じが強くなっている。
この散布図の推計式を当てはめた予測値と実際の名目GDPの推移は以下の通り。

一時期100兆円程度実際の値を上回っていた予測値は、人口減少と名目GDPの健闘を反映して逆転し、足元ではむしろ200兆円程度実際の値を下回っており、しかもその差は拡大傾向にある。
次に、名目GDPと就業人口の散布図と、それによる予測値と実際の名目GDPの推移。


前回のエントリでは、就業人口による名目GDP予測値を経済の総供給と見做して、1970~80年代には名目GDPが供給力を上回って推移した後、1990年代は供給力を下回る形で名目GDPが推移し、2000年代に入ると景気悪化や高齢化で供給力も低下した、と解釈した。だが、今回のグラフでは、2010年代半ばから供給がまた伸び、足元では900兆にまで達している。
前回のエントリではここで名目GDPを実質GDPに入れ替えたグラフを提示したので、ここでもそうしてみる(ただし、前回は最初の人口の伸び率と成長率との推移グラフは省略したが、今回はそれも実質成長率について再描画する)。





総人口ベースの予測値では、名目GDPと違い、実際のGDPとの大幅な乖離は2010年代に至るまで発生していない。2010年代に入ると、名目GDPと同様、予測値が人口減少を反映して低下し、実際の値との乖離が時間とともに大きくなっている。
就業人口ベースの予測値では、1970~80年代のGDPからの下方乖離は名目に比べてかなり縮小した。だが、その後の推移――1990年代に予測値が実際のGDPを上回って推移した後、2000年代に予測値が低下したことでその差が縮小したものの、2010年代半ばから予測値が伸びて差が再び開いた――は名目と同様である。
ここで注意すべきは、巷間良く指摘される点だが、最近の就業人口の増加は女性や高齢者の労働参加率の上昇に因るところが大きく、労働時間の増加を必ずしも伴っていない、という点である。そこで、労働時間とGDPの散布図と、それによる予測値の推移を描いてみる。
まずは名目ベース。


労働時間の動きはかなり時系列的に不規則で、(単位根による底上げが期待できなくなることもあり!?)決定係数はかなり低くなる。予測値の変化は劇的で、就業人口ベースでは実際のGDPを大きく上回っていたのが、労働時間ベースではむしろ大きく下回っている。単純に解釈すると、就業人口ベースでは見えてこない時間当たりの生産性の大きな上昇がこのグラフには現れていることになる。
次いで実質ベース。


こちらも同様の傾向である。
時間当たりの生産性は本当に近年それほど高くなっているのだろうか? そのことを確かめるため、OECDの生産性関連データで、名目GDPを、労働時間当たり名目GDP、一人当たり労働時間、雇用者数で分解してみよう。以下は、名目GDPと各要因を1995年からの累積対数変化率で示した図である。

労働時間当たり名目GDPは確かに大きく伸びており、雇用者数の低迷と労働時間の大きな低下を補う形で名目成長率を確保する格好になっている。
実質GDPについて同様のグラフを描くと以下の通り。

労働時間当たりGDPの伸びはさらに顕著で、1995年から2023年までの累積対数変化率が名目は25ポイント程度だったのに対し、実質は30ポイントを超えている。
では、米国はどうだろうか?


デフレを経験しなかった米国は名目の方が実質より高くなっており、1995年から2023年までの労働時間当たりGDPの累積対数変化率は名目が100ポイント超、実質が45ポイント程度となっている。日本が伸びたといっても、名目はもちろん、実質でもやはり米国には劣っている。逆に言えば、米国と同等の生産性を達成できれば、雇用者数の低迷と労働時間の大きな低下という逆境下でもまだGDPを伸ばす余地はある、と言えそうでもある。