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ワクチン、自由貿易、外国人労働者

今回は雑文。表題の3つのテーマの共通点について思い付いたことをメモしておく。

  • いずれも巨視的(マクロ的)には効用があるが、統計やニュースをきちんと追いかけている人でない限り、個人レベルでは実感しにくい。
    • ワクチンは疾病の予防効果や重症化防止効果があり、国全体や世界全体でみた感染拡大防止などに効果があるが、個人レベルでは実感しにくい。該当の疾病に感染しなかったのはワクチンのお蔭だったのかな、と後から振り返って思う程度。
    • 自由貿易も経済学原理によればマクロ経済に恩恵がある。ただ、個人が実感するのは、輸入品が安く豊富に手に入るようになった、輸出企業に勤めている人は会社が儲かっている、といったエピソード的な話で、やはり経済全体への恩恵は見えにくい。
    • 外国人労働者労働力人口の不足を補うという点で効用がある。実際に外国人労働者を雇用している人はその恩恵を実感しているかもしれないが、それ以外の人はコンビニやスーパーで外国人の店員が増えた程度の認識にとどまるだろう。
  • その一方で、マイナス面は目に付きやすい。
    • ワクチンは副作用で苦しむ人、自由貿易は国際競争に負けて廃業・失業した人や寂れた地域、外国人労働者は生活習慣の違いによるトラブルや一部の不心得者による犯罪がどうしても耳目を惹いてしまう。
  • 統計で殴ることはあまり有効ではなく、むしろ逆効果になることも。
    • そうしたマイナス面を強調する言説に対して、マイナス面はプラス面から見れば小さい、ないし統計的に非有意、という反論がしばしばなされるが、以下の理由であまり有効ではないと考えられる。
      • 統計的にゼロと差がない、というのは、ゼロ、とは違う。実際にマイナス面に直面している人が存在する限り、その人たちの不効用を無かったことにはできない。自然災害、原発事故、航空事故など、統計的に発生確率はゼロに近いが発生すると大きく報道される事象を実際に人々が目にしている以上、そうした議論が説得力を欠く面は否めない。
      • 統計的に有意になった時には既に問題が拡大して対処が困難になっていることもあり得る。その意味で統計データは当該問題についての遅行指標であり、問題には早めに手を打つべき、という説得的な一般論には対抗できない。
    • 以上の欠点を軽視して統計を反論材料に使うことは、そうした反論や統計への不信感を高め、逆効果になることも考えられる。
      • 以前読んだSF短編で、未来の高速道路で自動運転車に乗っていた人が事故に遭い、あなたが今経験した事故は非常に発生確率が低いものです、という自動音声の報告を聞きながら死んでいく、というものがあったが、そうした報告と同じように実際に一部の人に起きた現実を軽視した人情味を欠いたもの、と受け止められる恐れがある。
  • 別の手段による対策が可能、という言説を潰すのは難しい。
    • ワクチンについては、そもそもワクチンなど打たなくても病気はさして問題ない、むしろ副作用の方が大きい、という言説が根強く存在し、特にコロナ禍についてはその傾向が強い。それ以外の疾病については、民間療法を持ち出す人が時に出てくる。
    • 自由貿易については、トランプ関税にみられるように、輸入品を入りにくくして国産品を振興する、という保護貿易主義がやはり根強くある。
    • 外国人労働者については、少子化対策で国内の労働力を増やせる、という反論があり得る。
    • いずれの代替策も非常に困難ないし不可能、と科学的に反論することはできるが、クイギンのいわゆるゾンビ経済学*1クルーグマンのいわゆるゴキブリ*2のように、そうした言説は常に舞い戻ってくるものであり、完全に無くすのは難しい。



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