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コロナ禍支援はどの程度効果的だったのか?

と題したエントリ(原題は「How effective was pandemic aid?」)でタイラー・コーエンが、Jeffrey Clemens、Philip Hoxie、Stan VeugerのSSRN論文紹介している。これは2年半前にコロナ禍の財政救済策は効果的な財政刺激策だったのか? 州・地方政府への補助についての実証結果 - himaginary’s diaryで紹介したNBER論文をアップデートしたものだが、要旨の前半に記述された雇用維持コストの推計期間と数字がやや変わっている。具体的には、前回は

We use an instrumental-variables estimator reliant on variation in congressional representation to analyze the effects of federal aid to state and local governments across all four major pieces of COVID-19 response legislation. Through September 2021, we estimate that the federal government allocated $855,000 for each state or local government job-year preserved. Our baseline confidence interval allows us to rule out estimates of less than $433,000.
(拙訳)
我々は、議会における代表性の違いに基づく操作変数法の推計値を用いて、コロナ禍対策の主要4法案の州・地方政府への連邦補助金の効果を分析した。2021年9月までの期間について、維持された州・地方政府の仕事・年につき855,000ドルを連邦政府が割り当てた、と我々は推計する。我々のベースラインの信頼区間によれば、433,000ドル以下の推計値は除外できる。

となっていたのに対し、今回は

We use an instrumental-variables estimator reliant on variation in congressional representation to analyze the macroeconomic effects of federal aid to state and local governments across all four major pieces of COVID-19 response legislation. Through December 2022, we estimate that the federal government allocated $603,000 for each state or local government job-year preserved. Our baseline confidence interval allows us to rule out estimates smaller than $220,400.
(拙訳)
我々は、議会における代表性の違いに基づく操作変数法の推計値を用いて、コロナ禍対策の主要4法案の州・地方政府への連邦補助金のマクロ経済的な効果を分析した。2022年12月までの期間について、維持された州・地方政府の仕事・年につき603,000ドルを連邦政府が割り当てた、と我々は推計する。我々のベースラインの信頼区間によれば、220,400ドル以下の推計値は除外できる。

となっており、推計期間が1年3か月延長されて、推計された雇用維持コストが下方修正されている。

また、要旨後半の財政支出の効果については、前回は

Our estimates of effects on aggregate income and output are centered on zero and imply modest if any spillover effects onto the broader economy. We discuss aspects of the pandemic context, which include the surprising resilience of state and local tax revenues as well as of broader macroeconomic conditions, that may underlie the small employment and stimulative impacts we estimate in comparison with previous research.
(拙訳)
総所得と総生産への効果の推計値の中央値はゼロで、経済全体への波及効果は、あったとしても小幅なものであったことを示唆している。我々は、マクロ経済全体の状況だけでなく州・地方の税収が驚くほど回復した、というコロナ禍の下で見られた傾向について論じる。そのことが、我々の推計した雇用や景気刺激の効果が従来の研究に比べて小さかったことの背景にあると思われる。

と記述されていたが、今回は

Our estimates of effects on aggregate income and output are centered on zero and imply modest if any spillover effects onto the broader economy.
(拙訳)
総所得と総生産への効果の推計値の中央値はゼロで、経済全体への波及効果は、あったとしても小幅なものであったことを示唆している。

と最初の文以外は省略されている。ちなみに本文の結論部では、論文で推計された財政乗数がほぼゼロになった要因として、

  1. マクロではなく地域の乗数を推計したこと
    • ただし論文では、両者の大小関係を定める一般則は存在しない、というRamey(2019*1)の言葉を引用しつつも、外部資金か地域資金かで財政乗数は思われるほど差が出ない、というPennings(2022*2)の結果も引用しており、言外にマクロの結果もそれほど違わないだろうと思いを滲ませているようである。
  2. コロナ禍期は金融危機後のような長期停滞や需要不足の時期ではなかったこと
    • そのため、財政乗数の推計値も低くなる(ここで論文は再びRamey(2019)を参照している*3)。
  3. 分析期間で財政支援金がすべて使われたわけではないこと
    • ただ、州の財政状況が厳しかった時期よりも長い期間をカバーしており、インフレが高騰した時期まで含んでいるので、金融政策で相殺された効果もあるだろう、とも述べている。
  4. コロナ禍対策がすべて経済活動の最大化を目標としていたわけではないこと

の4点を挙げている。

コロナ禍対策については、米国版雇用調整助成金は高くつく? - himaginary’s diaryで紹介したマンキュー、およびそこで参照されていた8000億ドルの給与保護プログラム:資金はどこに流れ、なぜそこに流れたのか? - himaginary’s diaryCOVID-19と安定化政策は支出と雇用にどのように影響したか? 民間部門データに基づく新たなリアルタイム経済トラッカー - himaginary’s diaryの各論文でもコスト高が指摘されていたが、この論文では、それらの論文よりもさらに高い推計値になったことを指摘している。そのほか、コロナ禍の失業給付は雇用を減らしたのか? 2021年6月の州レベルの早期終了による実証結果 - himaginary’s diaryで紹介したような雇用への否定的な効果もこの論文では指摘している。

なお、コロナ禍期の財政乗数についてはコロナ不況における財政乗数 - himaginary’s diaryコロナ禍での財政刺激策と商業銀行貸し出し - himaginary’s diaryで紹介した論文のように肯定的なものもあるが、この論文ではそれらは参照されていない。

*1:これ

*2:これ

*3:ただRameyはその2019年論文でも参照している流動性の罠の下でも財政乗数が高くなるわけではない - himaginary’s diaryで紹介した論文では、不況期に財政乗数が高くなることについて否定的であった(掲載版(Government Spending Multipliers in Good Times and in Bad: Evidence from US Historical Data | Journal of Political Economy: Vol 126, No 2)では流動性の罠の下での財政乗数について否定的なトーンをやや弱めたようにも見えるが)。




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