
田舎から上京したばかりの青年が都会で恋に落ち、東京の荒波にもまれながらも婚約に向けて奮闘するラブストーリー。恋に仕事に“真っ直ぐバカ”な熱き青年・榊原俊平、通称“しゅんぴ”と、天真爛漫で可憐なヒロイン・長坂真理の物語となる。
これは勝男(竹内涼真)が“完璧な男”になるためのバイブルとして、繰り返し鑑賞しているドラマ『フォーエバーラブは東京で』のあらすじ。『東京ラブストーリー』などのトレンディドラマのパロディであり、勝男の古い価値観を表すための装置かと思われたが、どうやらこの劇中劇は本編と入れ子構造になっている。
しゅんぴ:輝雄、諦めてくれ!真理の中にすでにお前はいない
真理:いないのっ!
4話における『フォーエバーラブは東京で』では、真理を追いかけまわす元カレの輝雄が、2人に突き放される。鮎美(夏帆)にフラれ、新しい恋人がいるとわかっていながらも、鮎美への執着を止められない“粘着テープ”こと勝男は当然、輝雄に肩入れし、「輝雄~~~っ」と叫ぶ。真理の中にすでに輝雄はいない、果たして本当にそうなのだろうか。彼女たちの中に、輝雄や勝男は、過去の恋人たちは、完全にいなくなってしまうのだろうか。勝男はこの問いに向き合い続けている。
(執着がないって)寂しくないですか?
元カノって言った?
(元カレって)・・・無関係なの?
時間が流れたら、鮎美への気持ちが薄まるのかな?
もしかしたら俺は、鮎美がいない世界に慣れていくのが怖いのかもしれない
想いが簡単になくなってしまうことに抵抗がある、恐れている。なぜなら勝男は、大量生産・大量消費に断固反対のサステナビリティ(持続可能)な男なのだ。将来に渡って、誰かに何か影響を及ぼし続けたいのである。劇中劇のみならず、今回は休日出勤までする大手トイレメーカーでの業務といった細部までもが、ドラマの深層テーマと絡み合っていく。こういう作劇の巧さがこのドラマの強度である。
また、勝男が「元カノ以外に夢中になれるもの」である出汁。出汁をとるために使う昆布や鰹節は、処理が終わった後は出汁殻として取り除かれてしまう。二度と一緒になることはない。しかし、出汁には昆布や鰹節の旨味がしっかりと残っている。別れてしまった恋人というのも、そういうものなのじゃないだろうか。

勝男と鮎美が、それぞれの場所で、違う相手を想いながら、時を同じくしてオムライスを作り出すシークエンスは、すれ違いと共鳴が同時に描かれており、実に切なく感動的だ。鮎美が勝男に作ってあげた愛情としてのオムライスがしっかりと勝男に残っている。いや、「勝男に作ってあげた」という経験があるからこそ、鮎美にもオムライスが愛情の表現として居座っているのだ。
影響を及ぼし続けたい勝男が、新しい恋人ミナトに対して「鮎美にしてあげて欲しいこと」を、手料理を美味しく食べてあげて、食器用洗剤は植物性にしてあげて、トイレットペーパーはダブルにしてあげて、時々高いアイス買ってあげて・・・と具体的に羅列していくシーンもまた感動的だ。
俺が鮎美にできなかったこと、しなかったこと、思いもつかなかったこと
たくさんしてあげて欲しい
鮎美のこと、まかした
マウントみたいにも聞こえるし、「男が女にしてあげる」「まかせる」という発想自体が前時代的であるし、ミナト(青木柚)には「大丈夫ですよ」と一蹴されてしまうのだけど、ここには確かに勝男の真なる愛情がある。
タイムマシンがあったとしても、どこらやり直せばいいかわからないけど
それでもまた鮎美に出会いたいと思ってしまう
泣かせる。『BLEACH』における井上織姫の「5回とも同じ人を好きになる」*1じゃないんだから。誰かのことを本気で想うことは、ダサいことなんかじゃない。絶対にその誰かに良い影響を残す、サステナビリティな営みなのだ。がんばれ、勝男。みんな、勝男を応援しているぞ。「鮎美は、本当はこういう男が好きだったのかなぁ 俺とは全然違う、かわいい系っていうか・・・」とか言っていましたが、混ざり合い変わっていきながらも、みっともなくも一途に鮎美を想い続けている勝男が1番かわいいよ。断じて、無理してテキーラを飲んでいるからかわいいわけではないのです。
*1:あ~あ 人生が5回くらいあったらいいのになあ! そしたらあたし、5回とも違う街で生まれて 5回とも違うものをお腹いっぱい食べて、 5回とも違う仕事して・・・ それで5回とも・・・同じ人を好きになる