これまで何作も読んできた、好きな作家の柴田よしきさん。ほのぼのした話からピリッとしたミステリーまでいろいろ書かれる。先日リクエスト本3冊を返しに行ったとき、生涯学習センターの図書室の棚にこの柴田さんの作品を見つけたので、迷わず借りて来た。
『風のベーコンサンド』。東京で編集者として充実した仕事をしていたが、自分をズタズタにするモラルハラスメントの夫は離婚にも応じてくれないため、家を出てペンションブームの去った「百合が原高原」でカフェを開く女性奈穂の物語だ。
カフェを開くにあたってカフェスクールで学んだようだが、それ以前に奈穂は鋭い味覚を持ち、人のために料理をすることがとても好きな人だったようだ。また百合が原高原には美味しい野菜を作る農家、高品質の乳製品を作る牧場、天然酵母の美味しいパンを売る店もあり、奈穂の創作意欲をかき立てる。
しかし、バブルがはじけて潮が引くようにペンションブームが去った百合が原高原は、村営のスキー場も潰れ、村中に咲き誇る百合の花の時季を過ぎると、これといった観光資源もない。そんななかでカフェを続けていくのは簡単ではないが、幸いなことに奈穂には役場の職員やら牧場の娘の南など、力になってくれる周囲の人も多い。
そうした温かな人との交流も魅力的だが、何と言ってもこの物語の一番の魅力は登場する料理の魅力だろう。実にこまやかに素材や味付けなどの表現がなされていて、ページから美味しそうな匂いが漂ってきそうだ。著者の柴田さんは相当な食通とお見受けする。
初めて迎える冬はいっそ休業してしまうかという問題や、大手のリゾートホテルができ、奈穂のカフェもある村内のメインストリートを車が通過しなくなるといった事態も生じ、また奈穂や周囲の人にもさまざまなことが起きるが、読み終えてほのぼのした気分になる物語だ。
ただ、この作品の前に読んでいたのが『ダイヤモンドダスト』だったからだろうか、少々軽いという印象を受けてしまった。私の、柴田作品への期待も影響したかもしれない。ネット上のレビューも結構好評で評価は悪くないので、たんにタイミングの問題かもしれない。
このところ急激に春めいて、今日は午前中銀行に行くのに上着も着ないで出たが、それでも歩いていると汗ばむほどだった。服装をもう少し薄手の物にすればよいのかもしれないが、家の中ではこれでちょうど良いのだ。もう家の中より外の方が暖かい。今年梅は遅れたようだけれど、この暖かさで桜の開花は一気に進むかもしれない。
