父親と二人暮らしだった雨音(あまね)だが、そのたった一人の家族である父を交通事故で突然失ってしまう。交差点で隣に立っていた、来月籍を入れることになっていた婚約者の帆波さんはちょっとした怪我で済んだのに。
父の妹である洋子おばさんは「うちにおいで」と言ってくれるが、おばさんには受験生2人を含む3人の男の子がいるうえ、おじいさんも介護していておじさんはとても無理だと渋い顔をしている。
雨音は今のマンションで一人で暮らすと主張するが、いくらお金を払っても中学2年生の女の子一人では、契約できるはずがないとおばさんに言われる。ならば、赤ちゃんの時に自分をおいて出て行った生みの母を「利用しよう」と雨音は決心する。幸いその母は、「お困りでしたら、わたしと住みますか?」と言ったらしい。
こうして雨音と実の母の国吉さんとの共同生活が始まるのだが、その国吉さんは、会うなり「では、これから同居するにあたって、いくつか確認と取り決めをしていきたいと思います」などと言う人だった・・・。
作中には一度も出てこないが、おそらくこの国吉さんはなんらかの自閉症の人なのだろう。決まった手順ですることは良いが、突発的なことへの対処が苦手な彼女にとって、赤ちゃんは予測のつかないことだらけだった。
彼女との生活は雨音がビックリするようなことの連続だが、このおかしな国吉さんがなかなか魅力的な存在だ。そのうえいまや全くの他人である帆波さんが、お腹に雨音の異母兄弟がいるし、自分は雨音や国吉さんと一緒に暮らしたいとこのマンションに引っ越してくる。
定型とは違う3人の女性たちの暮らし。中心にはその3人を愛し、愛されてもいた雨音の父親がいる。血がつながっていても、憎み合う家族もいる。他人同士でも、お互いを思い合って温かな家庭を築くこともできる。
雨音の幼馴染の廉太郎の抱える問題も並行して描きながら、困難の多い人生、見せかけの優しさや善意、真に相手を思うとはといったことが描かれる。著者は児童文学作家でこの作品もジュニア向けなのかもしれないが、深く訴えてくるもののある良作だった。
良い作品に出合わせてくださったきょうこさん、ありがとうございます!
